パブリック・ディプロマシー日本外交に望むこと

34年間の外交官生活を振り返って

菅総理は「終わった人」

ここ数日は、森東京オリンピックパラリンピック組織委員会会長の「女性が参加する会議は時間がかかる」という発言で、内外から批判されている。

 

森さんは昔から失言大王だ。無党派層は選挙で投票に来ず、「寝ていてくれればいい」とか、浅田真央選手について「あの子は大事なところで転ぶ」とか。あんたは、いつも大事なところで失言する。困ったじいさんだが、「元」総理であって、「現」総理ではない。

 

私は、現総理の菅さんの長男の総務省幹部に対する贈収賄疑惑の方が、由々しい問題だと思う。

 

週刊文春」は嫌な雑誌だ。事実を歪曲することもよくある。それでも、目隠しされた写真の長髪の男性が「自分の息子かどうかわからない」とは、菅さん、何事だ。

 

森さんも記者会見で切れていたが、菅さんも国会で切れていた。「息子といっても40過ぎた別人格ですよ」と息巻いている。その別人格を、自身が総務大臣の時に政務担当秘書として総務省内を闊歩させたのは、菅さん本人だ。その後、この長男は総務省が許認可官庁である放送関係の会社の幹部に就任したそうだ。

 

二階さんに誘われてステーキ会食に出かけた菅総理と同じノリで、総務省幹部は菅長男に誘われていそいそと会食に出かけたのだろう。「行政をゆがめる」リスクを承知で。

 

当初は利害関係者でないと思っていたので、菅長男に「おごってもらったが」、その後精査して「返金」したそうだ。アホか。

 

菅さんの発信力の乏しさを批判するのは、蓮舫さんだけではない。マスコミも今更ながら、「棒読み」「言い間違え」を指摘している。「今更ながら」というのは、この菅さん、7年8か月の間安倍内閣官房長官として朝夕2回、総計3200回以上「記者会見=発信の場」を踏んできた人なのだ。

 

場数を踏んでいるのに発信力がないとは何事か?3200回あまりの記者会見は、

  • 適切に対応している
  • 指摘は当たらない
  • お答えする必要はない

のフレーズで押しきってきたのだ。

出席していた政治部記者は、嫌な質問をすると菅さんに仕返しされるのがわかっているから丸めこまれてきた。8年近く毎日記者会見をやりながら、発信力を発揮する訓練など全く受けていない。記者も同罪だ。

 

東京新聞社会部の望月記者が食い下がっても、「貴女にお答えする必要はない」と切り捨ててきた。発信力などないまま、野党議員が猛獣のように質問するローマの円形闘技場に総理として放り出されたのだから、噛みつかれるのは当たり前。

 

総務大臣秘書官として側近として遇した長男を別人格(安倍昭恵さんを公人ではなく「私人」と閣議決定したことを思い出す)と強弁し、週刊誌に写真が掲載されている人物が自分の長男であるかどうかを「確認もしていない」。もうちょっと、答えようがありまへんか?

 

コロナ感染者数は減ってきた。季節は感染しやすい冬から春へと移りつつある。そこへコロナワクチン接種の前倒し(といっても数日の話だが)で、菅さんは点を稼ごうとしているのかもしれない。が、総理就任当初の「地盤、看板、カバンのない政治家」に対する若干の期待は、この長男の疑惑に関する発言でシャボン玉のようにしぼんだ。菅は外れくじ、「スカ」だった。終わった人、オワコンである。                                (了)