パブリック・ディプロマシー日本外交に望むこと

34年間の外交官生活を振り返って

議員の個人商店?―豊田真由子議員(2017.06.29作成)

2017年6月29日、「週刊新潮」に豊田議員の元秘書に対する暴言録音音声が公表された。

 

「死ねば?生きてる価値ないだろ、お前とか!」

 

テレビのコメンテーターは、「議員事務所は議員の個人商店だから、商店主の言うがまま」という趣旨の発言をしていた。

 

役人を経て個人事業主となった者として言いたい。個人事業主は自分で稼いで、雇った人に給与を支払っている。自身の生活費も、自分が稼がなければ日々の生活にすら困窮する。議員は事務所経費も秘書の給与も、もちろん自分の報酬も種々の名目の税金で賄っている。一緒にしないで欲しい。

 

現役最後の大使館勤務時代のことである。大使の奥さんが、宝塚歌劇団所属の長女の公演のためステージママとして日本に帰国するたび、大使は出勤せず、大使公邸で知的障害のある次女の世話をしていた。世界一時間給の高い介護職だ。大使が出勤してくれないと困ることは多々ある。その大使の判断が重要だからではない。大使は日々変化する世界情勢を踏まえた本省の方針を頭に入れておくのは当然だ。その情報は、大使館に物理的に出勤しないと把握できないのだ。勉強しない大使のために、部下が情報をプリントアウトして、重要部分に下線やハイライトをつけて、大使公邸まで届けなければならない。

 

大阪船場のあほぼんが老舗の当主となり、遊びまくって散在するのを番頭以下が苦労して支える、というのは山崎豊子花登筺の小説にありそうだが、税金で禄を食む現代の役人世界では看過できない。

 

知的障害を抱えたお子さんが心配なのは当然だろう。が、大使が守るべき普通の日本国民は、障害のある子どもの世話や老親の介護を、人を雇うなり、自ら世話をするため離職するなりしてなんとかしのいでいるのだ。

 

こういう大使のもとで苦労していた時、ある同僚はこう助言した。「大使は中小企業のオヤジなんだから」

「議員事務所は個人商店」と同じ論法で、「大使館は中小企業」で「そのオヤジは何をやっても目をつぶれ」というわけか?大使が自分の知恵と才覚でお金を稼いで収益を上げて、大使館員の給与を支払い、大使館の建物や自分や家族の住む大使公邸の賃料や維持費を支払っているとでも言うのだろうか?稼がなければ明日のない中小企業のオヤジに失礼だ。

 

それこそ「ち~が~う~だ~ろ!」

 

豊田議員の母親は東京外大出身だという。このお母さん、自分を配偶者だと娘が強弁して園遊会に一緒に参列したから共犯である。「配偶者に限る」という規則を盾にとる宮内庁職員に対し、ごり押しする娘を諫め、参列を辞退することもできた。たとえ、天皇皇后陛下のために一世一代の晴れ着でめかしこんできたとしても。娘が国会議員でも、親はいつでも娘を諭すことはできる。雇われた秘書ではないのだから。

                         (了)