パブリック・ディプロマシー日本外交に望むこと

34年間の外交官生活を振り返って

7月26日中部大学講義「グローバリゼーションと日本の若者の未来」(2017.07.29作成)

 

世界の中で日本の置かれた状況

過去、現在比較

日本の経済規模(購買力平価、現在):世界の3.7%(1991年は9%―過去との比較)

全盛期の半分にも及ばない、その間アメリカの経済規模は日本の経済規模の3倍に(人口も2億人から3.1億人)

データにあたる習慣をつける

出典:World Economic Outlook IMF が、英語の原典にあたっての検索は大変難しい

将来研究者、論文、著書発表の場合:自分で一時情報を探す習慣は重要

が、時間を節約するために、ある程度信頼をおける人、団体が編集した日本語の資料を参照するのは時間の節約(資料、統計チェックが嫌にならないために)

なお、IMFのデータも各国から提供された資料を編集している

日本の購買力平価(各国の物価指数を考慮)で世界第四位【中国、アメリカ、インド、日本】

市民一人あたりの生活水準はアジアで5位 (世界で29位)

アジアの富裕国(地域)シンガポールブルネイ、香港、台湾 (2017年には韓国にも抜かれそう)(注)中国は台湾を自国の一部地域としている

成長率(将来):内閣府「国民経済計算」1991-2012 0.9% 2010-14 1.2%

2008 -3.7% 2015 1.5%

他国との比較-横の比較

軍事力:軍事予算世界9位(1%前後) (米国:GDPの3%から4%へ)

 

海外のことを知ると、日本の制度改革の参考になる、ただ、海外のことを知る必要があるのは国際学科に限らない→国際学科出身である付加価値を示す

 

課題

再び世界第二の経済大国になりたいのか?

どのような国にしたいのか?――皆さん方若い人が考え、それを実現してくれる政治家を選ぶこと

その将来像に応じ、課題が違ってくる→対策も異なってくる

国民一人ひとりの経済的、精神的生活が豊かで安定してほしい(犯罪率、民度等に影響)

高度成長を遂げ、成熟経済となった

・生産性をあげること

・これまで力をいれてこなかった分野で外貨を稼ぐ:農業、食品加工、観光、

1.経済社会情勢

少子高齢化 

国の借金 正しい借金(良い借金、悪い借金)返済のメドがあるか?借金をして投資として高いリターンが望めるか?

北海道夕張村→村長、公務員、議員の報酬減、行政サービス減、長野県王滝村→議会廃止

例:スイスの議員は無報酬(海外の例を知ることも参考になる)民主主義の多様なあり方

デフレからの脱却 賃金(給料)、人件費、労働市場

2.国際関係

テロの相手(日本での過去のテロ事件:地下鉄サリン連合赤軍、英国の場合:以前は北アイルランド→ISまたは国内の英国籍のテロリスト)

周辺国(中国、ロシア、北朝鮮)は19世紀の論理で動いている難しい国々→彼らの方が軍事力、経済力で強ければ、その意向に従わざるを得なくなる

 

未来への指針

国も個人も、変わることは悪いことではない 変節、朝令暮改、君子豹変する

強いから生き残ったのではなく、変化に適応してきたから―ガラパゴス ガラケー

任天堂花札)→NINTENDO

ユニクロ(繊維産業=斜陽産業と言われていたが) 東レ

 

1.大学入学→就職を考えるにあたって

労働市場での競争相手は日本人だけではなく、また人間だけではない AI、ロボット

日本が得意とする産業、技術も変遷していく→名古屋地域といえば自動車産業

が、米国では自動運転車(テスラモーターズ)が現実のものとなり、ヨーロッパは2040年までにガソリン車、ディーゼル車の生産終了を目指す

大学も国際競争にさらされている。大学の講義もAI?海外の有名教授の講義もネットでフォローできる時代、海外の大学の学位も遠隔授業で取得可能

 

日本市場は縮小(国内の消費者が減っていくのは確実)→同じ生活水準を維持する=同じ付加価値(output)を創りだしていくには、生産性を上げ、海外に活路を見出さざるを得ない

(以前から資源のない日本は、輸出で外貨を稼がねばと言われていたが、今も同じ)

雇用者は日本企業とは限らない。アジア1豊かなシンガポールは、海外からの投資(税、英語、銀行秘密、会社設立の容易さ等)で豊かさを実現→上司、同僚、部下が外国人であることも、多文化共生―理想と現実は違う(自国民、家族、お友達優遇等)

日本は外国資本にとっては魅力的な投資先か?英語、規制、税率

日本に残る分野:インフラサービス(電力、水道、ガス、道路、鉄道)だが、日本人が雇われるとは限らない。日本人が建設、補修整備するとは限らない(ロボット、AI?)

就職人気企業は過去、現在、未来で入れ替わる

正社員?東芝、シャープ

公務員人気:中央、地方政府は補助金、予算でサービスを提供し、コスト無視し、収益をあげてはいけない→人生100年時代に公務員として長年生活すると、現実世界が見えなくなる

自分の適性、興味のあること、得意分野にいつ気づくか?

成長分野:食品、農産物輸出、観光

経常収支=貿易収支(モノの輸出入)+所得収支(投資など)+サービス収支(海外旅行など)+「経常収支移転」(他国への経済援助)

英語、会計(平たく言うと財布のこと)、法律(リーガルマインドを身に着ける)

 

2.投票に行こう

オーストラリアでは、投票は権利であると同時に義務

民主主義の古参国英国では在外投票制度なし

事前予想に対しどのような行動をするか?

(1)棄権しても、(2)投票所に行き白紙投票しても、(3)事前予想通り投票しても、いずれも事前予想通りになる→事前予想通りが嫌なら投票所に行き、別の名前(党)を書いて投票するしかない

「まともでない人の中から相対的にマシな人を選ぶ忍耐を選挙と呼ぶ」チャーチル

(注)世の中完璧な英雄はいないー過去の英雄は美化されている(坂本龍馬)が、生存中の指導者は毀誉褒貶あり(生前のスティーブ・ジョブズ

 

 

効果測定

  • 日本より購買力平価ベースで経済規模の大きい国を三つ挙げよ。
  • 日本からの輸出が多い国(地域)上位3国を輸出額の多い順に次の中から選んで並べよ。

英国、韓国、ドイツ、米国、フランス、台湾、イタリア、中国、

  • 選挙の事前予想に賛同できなかったらどうする?

棄権する、投票所に行き白紙投票する、投票所で予想とは違う投票をする

                          (了)