パブリック・ディプロマシー日本外交に望むこと

34年間の外交官生活を振り返って

6月26日中部大学講義【外務省とは?】 【外交官の仕事】(2017.06.26作成)

2017年6月26日、中部大学における講義メモに加筆

 

「外務省設置法」という法律の第三条に任務、第四条第一項に29に及ぶ事務が列挙されている。29の具体的な事務は下記の同法を開いて参照してもらうとして、「任務」の条項を引用する。

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H11/H11HO094.html

 

(任務)

第三条  外務省は、平和で安全な国際社会の維持に寄与するとともに主体的かつ積極的な取組を通じて良好な国際環境の整備を図ること並びに調和ある対外関係を維持し発展させつつ、国際社会における日本国及び日本国民の利益の増進を図ることを任務とする。

  前項に定めるもののほか、外務省は、同項の任務に関連する特定の内閣の重要政策に関する内閣の事務を助けることを任務とする。

  外務省は、前項の任務を遂行するに当たり、内閣官房を助けるものとする。

 

目的:第1項をざっくりまとめると、次の2つ

平和・安全保障

日本国、日本国民の利益の増進

 

組織:この任務を遂行する組織として、次の2つがある

外務本省(国内)

在外公館 (海外にある大使館、領事館、国際機関への政府代表部)

ポイント:国内か海外か?

 

ヒト:組織を構成するヒトとして、本省職員は次の二つ

トップの大臣、副大臣政務官のように政治任命された幹部

役人(公務員)

 

ポイント: 政治家か役人か?

 

公務員の内訳も次の二つ

入省時から外務省に帰属する公務員

一時的に外務省に配属されていた者(出向者)

 

ポイント:入省時からの外務省員か、一時的に外務省に派遣されているか?

 

出向者も次のカテゴリー分けが可能

他省庁からの国家公務員

官民交流による企業関係者

学者、研究者、弁護士、会計士等専門性のある人材

関連団体(国際協力事業団国際交流基金等)派遣職員

自治体との交流による地方公共団体出身者(地方公務員)

 

ポイント: 外務省には、色々な背景の者がいる→異なる経験、背景の者の視点は国民全体の利益増進のためには大切、ただし、日本国全体の利益よりも、出身組織の利益ばかりに関心が向かう職員ばかりだと、日本国が一丸となって力を発揮できない弊害もある

 

在外公館(大使館、領事館、政府代表部)に勤務する者は次のに二つに分類できる

本省派遣

現地採用の日本人、外国人

 

ポイント:本省派遣か現地採用か?(企業の現地法人にも本社派遣社員現地採用の者がいるのと同じ)

 

本省から派遣されている者の分類

入省時からの外務省員

他省庁(中央省庁および地方公共団体)から一時的に外務省員となり、原則3年の任期を終えると元の省庁に戻るもの

関連団体派遣の準公務員、学者、研究者

ポイント:大使館員すべてが外務省出身とは限らない(領事館、日本政府代表部も同じ)

 

公務員の分類(試験制度)

政策面で大臣等を支える事務次官をトップとするキャリア官僚

キャリア官僚とともに大臣等を支えるノン・キャリア官僚

本省や在外公館の建物の維持管理、事務に必要な文房具、空調、インターネット環境整備等、事務を遂行する上で必要な足腰を支える職員(大事な仕事だが、外交活動を行うわけではない)

 

ポイント:大学にも教授、准教授、講師という教育・研究に携わる者と大学の事務職員がいるのと同じ

 

ここで一言

足腰となる職員も在外公館に勤務するが、外国語ができるとは限らない

在外公館に派遣される外務省以外の省庁出身者も外国語ができるとは限らない

外務省員も、自分自分の専門語学(ちゅ中国語やアラビア語、ドイツ語、フランス語等)は使えても、英語では仕事ができない者ももいるの

 

ポイント:世界中で英語で仕事を遂行することも可能な英語圏の国(米国、英国、オーストラリア、カナダ等)の外交官、在外公館職員と比べて、日本の在外公館職員は言葉のハンディを負っている者が多い→英語が大切

 

仕事の中身

政策に関係するもの

交渉事(バイー二国間(日本と相手国だけ)、マルチー多くの国を同時に相手にする)

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文化行事

セレモニー

市役所、区役所的な仕事(旅券、査証発給、証明書発給)

経費に関すること

 

このうち、政策や交渉に関する仕事は、智恵と工夫となんとか自分の任期中に結果を出そうという気力が求められる

また、どのような仕事をするにも、人件費をはじめ必ずお金が必要となるが、政府の仕事にもお金の使い方を工夫する(コスパが高い)ように促し、経費を節約すれば評価される制度が必要

 

最後に一言

大臣や幹部は、外交官の仕事は、出身母体が何であれ「日本国民の生命・財産を守ること」だと繰り返し職員に伝え、自分自身にも言い聞かせなければならない。残念ながら、青臭いと思われることも繰り返し伝えないと、いい年をした大人も自分の生活防衛を優先する方向に走りがちとなる。           (了)