東京五輪終わる:IOCバッハ会長の言動をみれば、なぜ英国人がEU離脱を選んだのかがわかる
開催国の主権者など、全く視界にないIOC
国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長の言動が、物議をかもしてきた。
7月に大勢引き連れて広島に乗り込み、五輪終了後は不要不急の「銀ブラ」のおまけつき。最初から最後まではた迷惑な人だった。
日本人選手のメダルラッシュには喜んでも、菅総理、小池東京都知事、橋本五輪組織委員会会長、丸川五輪大臣も五輪開催ありきで進み、IOCに言われるがまま、のように見えたことに納得できない国民も多かった。
オリンピックは経済波及効果が期待できるはずなのに、大枚をはたいて建設した競技場は無観客となり、主催者である日本側にはチケット収入もない。
選手の滞在費や交通費、食費等の経費は送り出す国の負担だろう。
これに対しIOC関係者の滞在費や交通費は誰が負担したのだろうか?5つ星ホテルを提供することになっていると報道されていたので、負担は主催者側なのだろう。家族も連れてくる。「五輪貴族」と言われるゆえんだ。
そういえば、バッハ会長は米国紙に「ぼったくり男爵」と呼ばれていた。
コロナが勃発する前も、マラソン協議を東京の8月に実施するのは選手に酷だ、札幌に場所を移動せよ、とIOCのコーツ理事とかが、決めた。小池都知事もあずかり知らぬ間に、ということで怒っていた。
8月の日本は札幌でも暑い。だから、8月ではなく前回の東京大会同様10月に、と多くの心ある人は思ったが、IOCはどこ吹く風。
識者の説明では、莫大な放映権料をIOCに支払う米国のテレビは、米国人に人気のスポーツ競技が開催されない閑散期である8月だから、放映権料を払う、のだそうだ。
ここらあたり、段々日本人も「なんで自分の国で開催するのに、時期も場所も日本側に決定権がないのか」と疑問を持ち始めた。
そしてコロナ。開催するか、延期するか、延期するとしていつまで、結局1年延期で開催等々の重大な意思決定も日本側の意向がどの程度まで反映されたのか不明だ。
この時点では、森前組織員会会長の時代だ。どの程度交渉されたのかはわからない。
相手(IOC)を説得するのと、自国民を説得するのといずれが容易か、は大きな判断基準だったのだろう。
森さんの総理を辞任する原因は、(無党派層は投票に行かず)「寝ていてくれればいい」という発言。
五輪組織員会会長辞任の原因は、「女性が会議に参加すると話が長くなる」(スムーズに会議が進行するのは、女性がいても)「皆さん、わきまえておられますから」という発言。
手ごわい海外の相手より国内のうるさいことを言わずに「わきまえた」、「寝ていてくれる」層を味方につけ、反対派を押さえつければいいという発想の人だと想像できる。
「国際」という枕詞に幻惑される日本人
この機会に日本人も「国際」「世界」とつくと公明正大で、高潔で、世界平和を常に考えている組織、という幻想を捨ててはどうか?
ヤフーニュースも五輪期間中、世界が日本人のおもてなしに感激した、などという提灯記事に溢れていた。
世界保健機構WHOのテドロス事務局長の言うことを信じる人は少ないはずだ。
IOCのバッハ会長も同類である。
二人とも自身の権勢拡大と保身のためには誰の言うことを聞けばいいか、を考えて動く人たちなのだ。バッハは米テレビ局、テドロスは中国。いずれも日本など眼中にない。
日本の松浦晃一郎UNESCO元事務局長や緒方貞子元国連難民高等弁務官UNHCRが、立派な人たちだったので、外国の国際機関のトップも同じように理想を胸に行動する人と思いがちであるが、日本人にも色々な人がいるように、外国人も色々。
なかでもIOCはひどい
歴代会長はヨーロッパ人が大半。スキャンダルまみれで、ヨーロッパ貴族の堕落を体現した人が多い。会長以外の理事たちもスポーツ貴族で、開催地を決める投票では巨額の賄賂が受け渡しされると言う噂が絶えない。今回の東京も贈賄の噂があった。
国連に代表される国家間の組織では、一応体裁は民主国家が大半だ。実際には中華人民共和国や朝鮮民主主義人民共和国のほか、独裁政権も多い。
スポーツ界のエリート国際組織では、ガバナンスやコンプライアンスを云々するより記録が大事。フェアプレイという理想はあるのだけれど。
特定のスポーツで世界一は文句なしの実績であり、余程自戒しない限りハナタカさんになってしまう。そして主権国家より自分の方が偉いと思ってしまう。主権国家の主権者は国民、有権者である。超スポーツエリート集団IOCに各国の主権者、国民など目にないのだ。
英国は欧州「国際」貴族に鼻づらを引きずりまわされるのが嫌だった
英国民は、ブラッセル(小国ベルギーの首都)に本部を置くEU(欧州委員会)「貴族」にあれこれ指示されるのはもう嫌、冷戦終結後新たに加盟国になったポーランドあたりから移民労働者が来て、英国人の仕事を奪う、等々の理由で2016年6月にEU離脱を決めた。その後数年間、離脱の手続きをめぐってすったもんだがあったが、宙ぶらりんの状況も昨年2020年1月にようやく収束し、もはや加盟国ではなくなった。
私がブラッセルで勤務していた1980年代、英国からサッチャー首相がEC(当時はEuropean Community)首脳会合に出席する度、文句たらたらを言っていた。
- 英国は多額の拠出をしているのに、英国にメリットのない他のEC加盟国の農業補助に予算が使われる
- 国民から選挙による信託を受けていないEC官僚があれこれ規則を作り、加盟国に指示する
英国民を日本国民、EC をIOCに置き換えれば、ここ数年の五輪をめぐる日本国民の不満にぴたりとはまる。
腹立たしいけれど、お金や権限を一旦預けてしまえばアウト!それでもコロナが勃発せず、普通に五輪が開催されていれば、それなりに経済効果はあったのだろう。
76年前の8月15日、日本人は自分で考え、判断する必要性を痛感したはず
コロナの新たな変異種ラムダ株が日本に持ち込まれたのは7月20日、五輪開催の直前で、持ち込んだのは五輪関係者だと言う。ラムダ株の公表は8月6日、五輪関係者によることの公表は8月13日だった。意図的な隠ぺいと言われても仕方がない。
デルタ株が猛威をふるう中のお盆休み。政府も東京都も医師会も国民に自粛を求めるが、IOCと対等に交渉できず、五輪を強行した人たちの言うことに何の重みもない。
私は自粛している。それは政府が言うからではなく、感染すれば苦しいのは自分だから。幸いにして毎日出勤する必要もない。現役世代も感染すれば後遺症が残るようだが、その恐怖より出勤する必要がある人は気の毒だ。
デパ地下の客寄せの大声は、出勤せざるを得ない人たちでも控えることは即可能だ。客の側も買い物は手短に黙って済ます。ひとりひとりが賢い国民にならねば。
IOC、WHO、日本国政府、医師会と戦うには、それしかない。
政府の言うことをに唯々諾々と従ってはいけないことを、76年前の8月15日に日本人は思い知ったはずだ。
(以上)