パブリック・ディプロマシー日本外交に望むこと

34年間の外交官生活を振り返って

アラン・ドロンが日本人女性にモラハラを受けた?

どんな美男・美女も歳をとる。

若い頃、人一倍(イヤ10倍も100倍も)輝いていたので、落差が激しい。

 

女性の俳優(もう「女優」とは呼ばないらしい)は、齢をとると表舞台に出なくなる。原節子は美しさのピークに銀幕から消えたそうだ。女優ではないが、36歳で事故死したダイアナ妃もキレイなまま。

80代の草笛光子、70代の風吹ジュンは例外だ。こうありたい。

 

男優は自身の劣化に気づかないのか、出演料を稼ぐ必要があるのか、いつまでも老醜をさらす。80過ぎた若林豪はぞっとする。亡くなった加藤剛高倉健もだ。

山崎努のようなクセのある俳優は、美男が売りではなかったので、変わった爺さん役で出演し続けられるのかも知れない。

 

そんな中飛び込んできたアラン・ドロンがパートナーの日本人女性からモラハラを受け、ドロンの息子が告発したというニュース。

 

 先日大学時代の友人と食事をしたとき、ジャニー喜多川の若い男性に対する性加害の話になった。彼女は、アラン・ドロンは著名な男性映画監督の寵愛を受けのし上がった、格上の女優ロミー・シュナイダーも、ドロンの強烈な上昇志向の道具に使われたと言う。そういう噂があったことに私も全く疑念を抱かなかった。男女を問わず、美貌が武器になる。男性も力のある男性に対してその武器を使えるのだ。

 

そんなドロンが90近くになって、さぞや醜くなり、侮蔑していた日本人女性に虐待されているという。私がパリに住んでいた1990年代、ドロンは仏TVF2でのインタビューでこんな人種差別的なことを述べた。

 

インタビュアーが、「あなたは日本で大変人気がありますが、なぜだと思いますか」と聞いたところ、頬を自分の手で軽くたたき、

 

C‘est une question de peau. 肌の(色)の問題だよ。 彼らは、白人のすることには何でも憧れている。

 

と、のたまった。

 

平然とアラブ人のプライドを叩き潰すフランス人は、ベルギー人や英国人のような近隣の白人も徹底的にバカにし、人種を問わず、相手を分け隔てなく侮蔑する「平等」な人たちだ。

この時のドロンは明らかに肌の色、スキン・カラーを理由に日本人を貶めていた。

 

あれから30年。2023年のジャパネット・タカタのCMでは、「最高級フランス産ダウン」を使った「ダウンケット」(何というお粗末な命名!)と叫んでいる。今時(いまどき)、ガチョウの肝で作るフォアグラはルーマニア産。ガチョウの羽毛であるダウンもきっとルーマニア等のEU産だろう。フランス=高級という思考停止で「フランス産」を連呼する悲しさ。

 

折から、中国の外交トップ王毅共産党政治局員が、日本人や韓国人が金髪にして鼻を高くしても西洋人にはなれない、中華文明がアジア人のルーツ、という趣旨の発言をしたとのニュース。

 

「米国を念頭に『域外の大国』が分断をあおっていると主張した。米国の影響を排除し日中韓の団結を促す意図から、欧米との違いをことさら強調。『欧米人は中日韓の区別が付かない』『「われわれは自分たちのルーツがどこにあるのか知るべきだ」」などと語った。」という。

 

www.jiji.com

「髪染めても西洋人なれない」 日韓への発言に「差別」批判 中国外交トップ(時事通信) - Yahoo!ニュース

 

アジア人、モンゴリアンが何かとコケ―ジアンの白人(この文脈ではフランス人ではなく米国人であるが)に憧れ、崇拝する風潮を戒めたのかも知れない。30年前のドロンの発言をアジア人側から補強している。

 

年老いたドロンのパートナーとなった日本人女性は66歳とのこと。

思い出すのは「ミザリー」という映画だ。

 

ミザリー (映画) - Wikipedia

 

両足を骨折し、移動の自由のない男性作家に対し、一見献身的な看護師女性アニーが、この作家のミザリーという小説のストーリーを書き換えよと暴力、暴言で迫る1990年の映画。作家と看護師の間に年齢差もある。

 

ミザリーが公開された1990年頃は、アラン・ドロンが日本人を揶揄した頃でもある。日本はバブルに踊っていたが、まだ岸恵子が一回りも年上のフランス人映画監督と結婚した戦後同様、白人の中高年男性と若い日本人女性との結婚が一般的だった。今では、年上で経済力もある日本人女性が年下の白人男性と結婚するケースが目立つ(例:売れっ子家政婦、料理人のタサン志麻さんとそのフランス人夫)。

 

日本人同士の夫婦でも、妻が、それまで借金、女遊び、DV、モラハラの限りを尽くしてきた年老いた寝たきり夫をのこぎりで殺害する事件があった。

 

ドロンを虐待したという日本人女性は、これまでマウンティングしてきた横柄な男が、年老い、醜くなり、体の自由もままならなくなった時、男性というものに対して、積年の恨みを晴らしているようにも思える。そこに「西洋人(男性)」という人種が要素として絡んできたリベンジ事件なのかも知れない。―――知らんけど。

 

2023年7月9日記