パブリック・ディプロマシー日本外交に望むこと

34年間の外交官生活を振り返って

統一地方選挙、衆参補選―投票用紙が送られてくる国に生まれて。幸せを噛みしめよう。

4月23日はいくつかの自治体の長とそれぞれの地元の地方議会議員を選ぶ日だった。

 

明石市の泉市長は、昨年秋の暴言で任期満了後は立候補しない、と発表していたが、後継指名された明石市議出身の女性が選出されたようだ。院政というか、後見人というか、泉路線を継続するのだろう。それが明石市民の多数意見なんだろうが、新市長は前市長のように市議会と血みどろの戦いをするのだろうか?遠い関西のひとつの自治体だけれど気になる。暴言はともかく、前市長は頑張って結果を出す数少ない政治家のひとりだったからだ。

 

同じ兵庫県の芦屋市では、全国最年少26歳の市長が誕生した。富裕層の街芦屋市出身で灘中、灘高、東大、ハーバード大とまあ絵に描いたようなエリートコース。泉前市長も東大だけど、たたき上げ、苦労人のオーラがある。明石の子育て支援に対し、芦屋は高齢金持ち老人、あるいは資産家の二代目三代目の要望を吸い上げていくのだろうか?パチンコ屋を市の条例で規制するなんて、それなりに先進的ではあった。東京の港区青山で家庭に恵まれない児童のための施設を建設することに反対する住民のことが話題になったが、高級住宅地(と言っても阪神電鉄やJRが走る浜側は、それほどでもないらしいが)ならではのブランドを維持、向上させ、資産価値を高めることも民意かも知れない。自治体それぞれに個性があって当然だ。

 

衆参補選では自民党が4勝1敗で勝ったとされる。統一教会を批判し続けてきた有田芳生候補は、安倍元首相の後継と目される候補者相手に力及ばず。世襲世襲の岸信千世(「のぶちよ」とはまたお公家っぽいお名前だ)候補も引退した父親の地盤を継いで当選。嫌だね。

 

1敗とされるのが、保守王国和歌山における日本維新の会候補の当選だ。吉村大阪府知事世襲ではないし、維新の生みの親である松井前大阪市長橋下徹大阪府知事もたたき上げだ。日経新聞の滝田洋一(特任?)編集委員は、「維新は小さい政府を掲げる唯一の政党」と評していた。実際、大阪府大阪市では身を切る改革を実現してきたと言われる。でもなあ、離党させざるを得なかった上西小百合とか丸山穂高とか、訳の分からん軽薄な経験不足の政治家を公認した党で、疑惑のデパートムネオハウス鈴木宗男氏は維新所属の国会議員。その娘鈴木貴子氏は自民党。しっかり家業政治家を経営している。

 

若者が政治に関心が無くなるのも仕方がないかも知れない。それでも投票に行くのだ。自民党政治が嫌なら、自民党を批判する泡沫政党に一票を投じるという意思表明をする。選挙権がなかった祖母の時代を経て、敗戦後ようやく実現した女性を含めた普通選挙が実施されるこの豊かで平和な日本国に生まれた幸せを噛みしめる瞬間なのだから。

 

(2023年4月24日記)