パブリック・ディプロマシー日本外交に望むこと

34年間の外交官生活を振り返って

大阪都構想、潰える(2020.11.02作成)

11月1日、大阪で都構想についての住民投票が実施され、5年前同様、今回も僅差で否決された。

 

アメリカ大統領選挙の陰に隠れて、東京では投票前はほとんど報道されなかった。渋谷のハロウイーンの方が大事なニュースなのだろう。

 

大阪維新の会の幹部は潔いが、日本維新の会出身の若手国会議員は往生際が悪い

コロナで株が上がった吉村大阪府知事をしても、「別に今のままでええやん」という気分には勝てなかった。松井市長は2年余りの任期を全うした後、政界引退を表明した。前回の反対多数で否決された時も、橋下さんは潔く退いた。このあたり、大阪維新の会の幹部は大阪都構想に不退転の決意で臨み、時我に味方せず、とみれば潔い。

 

正反対なのが国政政党「日本維新の会」から立候補し、不祥事で離党させられても国会議員の地位にしがみつく若手の議員たちだ。予算委員会を病欠して、男性秘書との地方旅行が報じられた女性や、「(戦争で)失った領土は戦争で取り返すしかない」(*)と酔っぱらって放言した人。自民党にも立憲民主党にも怪しげな議員がいるので維新だけの問題ではないが、残念過ぎる。

 

(*)ロシアは北方領土は返す気は全くない。究極の手段は実力行使なのだろうが、相手は核保有国。威勢より知恵を絞って欲しい。

 

「大阪」が大事なのであって、呼び名が市であろうが、都であろうが府だろうが重要でない

都市としての大阪を成長させ、シンガポールや上海と戦える競争力をつけたい、という目論見は、「大阪市がなくなってしまう」の声にかき消された。大阪市中央区(当時は東区)で生まれ育った自分にとって、東京、いやシンガポールと対抗できる「大阪」が大事なのであって、行政組織としての「市」とか「都」とかには関心はない。

 

橋下市長、府知事が登場して「二重行政」の無駄や、府や市の公務員の様々な手当、役得、特権が明らかになった。維新の改革は良いことばかりではなかったかも知れないが、この10年、地下鉄の民営化や万博誘致で大阪が動いていることは感じられた。

 

東京の人にとっては、大阪は地方都市のひとつにすぎないのだろうが、ド田舎の米国人がドルといえば米ドル、マイルだのガロン、華氏が世界で通じると思っているように、東京しか知らない「お上りさん」は、すべてを東京基準で考える。外務省に入省して東京出身の人と話した時、つくづくそのことを感じた。

 

笑いたくなるのは、大阪を田舎扱いしたある人は調布市在住だったことだ。その人の出身大学も国立市、東京23区にあるわけではないのである。目くそ鼻くそを笑う。

 

東京と競争するなんて小さい、小さい

パリは「たゆたえども沈まず」と形容される。大阪は太閤さんのいたキャラの立つ町だ。船場だけでなく堺の商人も気概があった。全米オープンで2度優勝した大坂なおみは、靭公園でテニスを始めたが、東京をカスめることもなく米国に渡り、世界の頂点に立った。料理も、上方落語も、吉本も全国区。大阪都構想はとん挫したが、東京ではなく、世界を目指す進取の気概を持つ人が大阪から生まれ続けることを願う。