パブリック・ディプロマシー日本外交に望むこと

34年間の外交官生活を振り返って

官僚がすごいエリートだと騒ぐ国(2018.03.作成)

彼岸の日なのに、東京は雪。昼のバラエティ番組では財務省の官僚がいかにエリートか、公文書改ざんの責任者だとされている佐川前理財局長のエリート街道まっしぐら人生をえんえんと伝えている。

 

1987年4月に名古屋国税局高山税務署長になったそうだ。バブルの真っ最中。佐川さんとほぼ同じ年次のある財務官僚は、税務署長になると各方面からご祝儀が提供され、500万円にもなった、とうそぶいていた。その話を聞いたのは1990年ごろで、自分の税金についての知識は乏しかった。今なら「(ご祝儀を頂いて)贈与税はお支払になりましたか?」と聞いていみたいところだ。

 

佐川さんがいかにエリートか、と嬉々として語るのは、東大法学部首席卒業、財務省入省、退職後弁護士になり、勉強の仕方についてのハウツー本で有名になった女性元財務官僚である。多くの人にとって財務省は遠い存在だから、彼女の話は新鮮なのだろう。「北朝鮮ってこんなところなんだよ」と何も知らない人に語るようなものだ。

 

外務省が財務省経済産業省と並びエリート官庁とは知らなかったが、自分の18歳、22歳の時の経験を踏まえると、受験勉強を開始し、成績が上がってきた高校生は、より偏差値が高い大学、学部を受験したくなるものだ。親兄弟が医師なら医学部進学、官僚ばかりだと国家公務員コースの法学部が自然な選択だろうが、多くの受験エリートにとってみれば、18歳で「これがやりたいから」と明確に自分の進路を見つけられるものでもない。高校の進路指導も「合格できる大学、学部」に受験生をいざなうことが中心だ。

 

難関大学の難関学部に入学してからの進路は、もう少し意思が明確になる。司法試験合格などそれほど苦痛ではないから法曹の道に進んだ、という人もいる。人権や環境問題に取り組みたいと何度も司法試験に挑戦し、30歳近くになった人には想像もつかないだろうが、成績がいいから、成績がいい学生を求めているところを就職先を選ぶという若者もたくさんいる。東大法学部から財務省に進んだ学生が、「日本の財政再建を実現したいから」「日本人が貯蓄より投資に向かうよう制度を整えたいから」という動機だったとは、およそ信じられない。足の速い子、身体能力の優れた子がアスリートを目指すのと同じ。スポーツエリートにとってのオリンピック金メダルのように、受験エリート国家公務員試験で好成績を納め、財務省はじめ、許認可権限の強い役所を目指すことになる。スポーツで成功する方が、はるかにハードルは高いが。

 

動機よりまず能力が伴わないとだめなのだが、目指したエリート官僚人生の到達点が、公文書改ざんなら悲劇だ。先日、大田現理財局長が、和田政宗自民党議員(NHKアナウンサー出身)の「(局長は)民主党野田総理の秘書官をやっていたので、安倍政権に不利な発言をするのだろう」という趣旨の発言に、声を震わせ反論したのには同情する。が、超エリートの目的が誰かに「お仕えする」人生とはいかにも残念だ。宿探しで、民間宿泊施設とともに国家公務員共済組合の宿(KKR)を探していたら、宿のトップの「国家公務員共済組合連合会理事長」は、財務省出身で内閣府事務次官をやっていた人だった。これもまたエリート人生の最終到達点だとしたら、日本のエリートとはなんと小さいのだろう。

 

日本国のために、世界のために何の富も生み出していないこれだけ日本の国家財政を赤字にした挙句、消費税率の引き上げに心血を注ぎ、おそらく税務署長就任の際に受け取ったご祝儀にかかる贈与税もを納税していなかった人たちがエリートなはずがない。

 

アマゾンのジェフ・ベゾス、テスラのイーロン・マスク、亡くなったアップルのスティーブ・ジョブズ。世界には綺羅星のような天才がいる。日本にもユニクロの柳井さんや、楽天の三木谷さん、AbemaTVの藤田さんもいる。日本の受験エリートが、富を生み出す人たちよりも、ゲームのルールを変えるほど革新的な仕事をした人よりも、創業者社長よりも、企業の活動を規制したり、税金を課したり、あるいは退官後○○商事、△△物産の顧問や社外取締役になることを夢見る官僚に憧れるのなら、日本の経済力はどんどん弱くなるのだろう。     (了)

ニセコは日本か?白馬と比較してみよう(2018.04.24作成)

北海道虻田郡倶知安町が地価上昇率日本1と言われて久しい。

 

冬の外国人スキー客を対象としたホテル、コンドミニアムの建設需要が地価を押し上げている。日本の都心3区のレベルと言うより、世界水準の不動産高騰現象なのだ。

 

日本の地価はバブル崩壊以降概して下落傾向、リーマンショック前や現在の金融緩和の下で局地的に高騰はあるものの、外国の比ではない。中国人が殺到するバンクーバーシドニー、IT企業の高所得者が集まるサンフランシスコやシアトルの不動産価格高騰に比べれば、都心3区も赤子のようなものだが、その外国の不動産価格の影響を受けているのがニセコ、世界水準の地価高騰という訳だ。

 

ニセコのスキー客は豪州人を中心にシンガポール在住の多国籍の富裕層、宿泊施設だけではなく、スキーリフト会社もシンガポール資本による開発で、おしゃれなカフェやラウンジが併設されたリフト券売り場、スキーレンタルショップとなっていて、日本の多くのスキー場のようにリフトチケット売り場周辺に、スキースクールやレンタルショップの安普請の掘っ立て小屋並ぶ雰囲気とは程遠い。

 

確かに日本人は少数派で、正直居心地は悪い。なんで日本なのに英語で注文をしなければならないのだ。外国人経営のスキースクールには、英語を話す外国人インストラクターを通じて子どもにスキー上達と英語に慣れさせようという思いの日本人の親もいるかもしれないが、極少数派、ニセコは日本国内の租界なのだ。

 

日本人が日本の旅行代理店を通じて日系航空会社でハワイに飛び、日系ホテルやコンドミニアムに滞在して、日系のスポーツインストラクターにサーフィンやダイビングを教えてもらうのと同じだ。ハワイの現地の方には、居心地が悪いかも知れない。

 

外交官をやめて「外貨を稼ごう、もう税金で食っているんだろうと言われたくない」との強い思いで、長野県白馬村と京都で宿泊施設を運営してきた。ミクロの世界では多少の実績は積んできたが、マクロの観点から観光立国を標榜するには、外貨が日本に落ちる制度を整える必要がある。 

  • 公的部門(国や地方自治体)がやるべきこと

まずは徴税をしっかり行うこと。外国人所有のホテル、コンドミニアムの固定資産税徴収はもちろん、スキーインストラクターやホテルやレストランで季節労働する外国人の所得を捕捉し、法人税、消費税の徴収もきっちりやることが期待されている。日本人相手にも手こずっている日本の徴税当局、特に田舎の町役場、村役場の租税課には荷が重そうだ。が、しっかりしてもらわないと困る。 

  • 民間部門がやるべきこと

日本人が外国人の需要にあった宿泊施設、飲食施設、スキースクール、スキーレンタルショップ、空港とのシャトルバス、ハイヤーサービス、スポーツマッサージ等を提供できること。

 

ともに豪州人スキーヤーに人気の北海道のニセコと長野県白馬村を比較すると面白い。白馬村でも、局地的に日本人が居心地悪いと感じる場所もあるが、何とか地元にお金が落ちる形になっていると思う。以下、外務省退官後の2013年の冬以来、白馬で多くの豪州人をはじめとする外国人スキー客を迎えてきた体験を元に、白馬とニセコを比較してみる。

 

2011年3月中旬、3.11の東日本大震災の直後ニセコに滞在した。日本の旅行会社企画の羽田からの航空券、空港からホテルまでのバス、宿泊代込のパッケージを予約していたのだ。旅行会社は当時の状況からキャンセル料なしで解約できる、とわざわざ電話をかけてきてくれた。が、有給休暇の申請も済ませており、何よりも当時から外国人スキーヤーに大人気と話題になっていたニセコとはどんなところか見てみたかったので出発した。

 

パッケージのヒルトン・ホテルもスキー場もガラガラだ。福島第一原発事故の影響で日本から外国人が一斉にいなくなった時期でもあるのだが、後の白馬村での経験から、豪州人のスキー客は基本的に年末から2月までの2か月余に集中し、3月に入ると彼らの夏休みも終わり、スキー場も空き始めることを知った。原発事故の影響ではなかった。

 

ちなみに、日本の観光立国政策に辛辣な意見を繰り返している英国人デビット・アトキンソン氏は、箱根の高級温泉旅館でチェックイン時間より少し早めに到着したが、入室させてくれなかった、とあちこちで書いているが、ニセコの閑古鳥が鳴いているヒルトン・ホテルでは、午後2時過ぎにバスで到着した私に、「チェックインは3時からです」と入室させてくれなかった。このフロントの若い女性が意地悪なのか、パッケージ客には一切サービスしないというニセコヒルトンの方針なのか不明だが、アトキンソン氏にも知って欲しい。まあ、彼はヒルトン・ホテルでも日本にあるからサービスが硬直的なのだ、と言うのだろうが。

 

ニセコに午後2時過ぎに着くには、千歳空港からのバスの乗車時間が3時間、飛行時間が約2時間、スキーの荷物を預けたり、取り出したりする時間が1時間余りとすると羽田空港到着が午前8時、ならば都内の自宅を午前7時に出なければならない。「ニセコは遠い」と感じたのが、その後同じくパウダースノーで有名な白馬村と比較し、物件購入をニセコではなく白馬にした決定的な要因になった。

 

本州にある長野なら施設を運営する自分は飛行機に乗る必要はなく、長野(当時)新幹線も特急あずさも、新宿からの特急バスも利用可能だ。自家用車があれば、自分で運転していける。これは運営者側の利便性だが、外国からの客にすれば、スキーだけが目的なら、千歳空港に着いて、陸路3時間ゆられてニセコに行くだけだ。富裕層なら空港からハイヤードアツードア、3時間もかかるまい。白馬の場合、数年前から成田空港からのシャトルバスが運行しはじめたが、5-6時間かかる。インバウンドスキー客にとっての利便性はニセコに軍配が上がる。しかもニセコなら11月頃から雪が降るので正月開けに学校が再開され、12月にスキー休暇をとるシンガポール人には、ニセコの方が降雪が確実だ。2015、16年の12月は白馬では雪が少なく、シンガポールからのリピーター客を迎えていた自分は気が気ではなかった。

 

ニセコと白馬を比較すると、雪の質、スキーシーズンの長短、羊蹄山という富士山のように美しい形の山の有無という違いがあり、これらの点ではニセコに軍配が上がる。ニセコでは物件高すぎて手の出ないボンビーオージーが白馬に流れてきたのだ、と自嘲的にいう向きもあるが、白馬には別の魅力がある

 

国内では首都圏からと関西圏からの双方のスキー客を迎えてきた歴史がある。私のスキー客も、白馬滞在の前後に京都で過ごす人も多い。名古屋経由か糸魚川―金沢経由である。もちろん、千葉県の東京国際空港に降り立ち、同じく千葉県の東京ディズニーランドで過ごしてから白馬に来る人もいる。チャーター便で千歳に来るニセコのスキー客ではほぼありえない滞在の仕方だ。

 

村のあちこちに石の道祖神があり、ヨーロッパの田舎町の街角に小さなキリスト像があることを思い出す。信州の歴史は奥深い。

 

団塊の世代は、昭和52年(1977年)の「狩人」のヒット曲「あずさ二号」に青春のほろ苦い思い出を重ねる。新宿発「特急あずさ」は、安曇野信濃路というロマンティックな響きを持つ地方と東京を結ぶ鉄道の象徴だ。脱サラで白馬でペンション経営に乗り出した団塊の世代が自身の高齢化と国内スキー人口の減少で、ペンションを手放したくなったタイミングに、オージーを中心とする外国人の買い手が現れたのだ。

 

このままだと大きな空き家がどんどん増えそうなところに、中古住宅を偏見視せず、改修して生まれ変わらせようという外国人オーナーが現れたのだ。後述の通り、企業の福利厚生施設も株主対策で売却され、オージーが買い取っている。白馬村にとっては、オージー様様だ。ニセコと違って中古物件供給が結構あったので、国際水準の地価高騰が白馬に及ばないのだ。それでもオージー資本が一旦買取り、豪華に改修した元ペンションは億単位の値で売り出されているものもある。

 

白馬村には外国人スキー関連事業経営者が日本人女性と結婚している例が多い。オージーの大工さんは奥さんの実家が建設業とかで、建築基準法も日本語で説明できる人だ。こういう人には、日本が第二の故郷なのだろう。

 

外国人客による酔っ払いや、交通事故、料金踏み倒し等の問題もあるかもしれないが、日本人のすべてが品行方正ではない。確かに自身の外国人宿泊客のゴミの分別がひどい時は、ため息が出る。が、隣のペンションから私の施設の前を通ってゲレンデに向かった日本人スキー客は、コンビニのおにぎりのセロファンを①②③の順に剥いて地面に落としていき、ブリート―の包み紙とたばこの吸い殻もポイ捨てだったことを思い出すようにしている。マナーの良い人もいればそうでない人もいる。日本人、外国人の違いではない。

 

白馬村の温泉では、ファッション入れ墨客は容認するようになってきた。オージー経営のレストランもあるのだろうが、彼らに大人気の寿司屋やそば屋は、日本人経営だ。残念なのは、同じく日本人シェフでオージーに大人気のイタリアンは、スタッフも味も値段も完全にオージー仕様。要するにまずくて高いのだ。

 

長野県には中央タクシーというユニークな会社がある。成田や羽田からスキー場の宿泊施設まで(あるいはその逆)乗り合いタクシーサービスを提供している。小林製薬ではないが、「あったらいいな」と思えるサービスで、私も自分のお客さんのためにアレンジすることがある。ありがたい。

 

白馬には羊蹄山(標高1898メートル)のような美しい形の山はないが、3000メートル級の白銀の山が連なる姿は圧巻である。それに何といっても温泉猿がいる。地獄谷温泉まで白馬村からはほとんど1日仕事だが、1週間以上滞在する外国人のファミリー客は、たいてい足を伸ばす。外国人経営の旅行代理店が英語のパンフレットを作って集客している。

 

概して、白馬村では年末から2月末までは外国人スキー客が大半、3月になると春休みの大学生が春スキーにやってくる。ペンション買取、宿泊施設経営程度の少額投資の外国人の場合、奥さんが日本人で白馬に根を下ろした人が多い。が、スキーシーズンともなると多数の外国人スタッフが殺到する。

 

英語のスキースクールは1日午前と午後の計4時間程度のグループレッスンで生徒一人12000円ほどの料金。日本のスキースクールなら5-6000円ほどである。確かにフリースタイルスキーのレッスンは、日本人経営のスキースクールにはあまりなく、バックカントリースキーなど違法で危険なレッスンで、外国人経営のスキースクール独自のものだが、高額レッスン料は別に外国人インストラクターの能力が高いというわけではない。彼らを日本に呼び寄せる往復の航空運賃と滞在費が上乗せされているだけの話だ。高いレッスン料にしないと経費が賄えないのだろう。白馬の日本人のスキー教室では、英語のレッスンはニュージーランド人経営の学校、中国語は台湾人経営の学校に行ってくれ、と棲み分けており、自ら外国語でのレッスンを提供して倍以上のレッスン料を得ようというガッツはなさそうだ。ゲレンデのオーナー会社にすれば、スキー教室の経営者が何人であれ、生徒がたくさん集まりリフト券を買ってくれれば御の字である。

 

高額投資案件となると、ニセコと同じ状況がみられる。自身の物件購入前に、オージー資本が日本の生命保険会社の保養施設を買い取って改装したホテルに泊まってみた。ピークシーズンを過ぎた3月中旬の低料金であったが、迎えの英国人女性は白馬の地理に疎い。冬の3か月、白馬駅とホテルの往復しかやっていないのだろう。クレジットカードでのホテル料金の支払いがシンガポール経由での請求になっていた。富裕層相手のホテルで、高額にもかかわらず満室続きだそうだが、このホテルのような経営者も客も外国人という例が、ニセコでは大半なのだろう。日本の税務当局が所得を捕捉できているのか。これは、白馬村の仕事ではない。最強官庁(?)と呼ばれていた財務省が歳入と歳出をやっているのである。理財局長から国税庁長官へ栄転して、公文書改ざんなどやっている閑があったら、政治家とともに観光立国日本に外貨が落ちる制度設計に知恵を絞るべきなのである。                   (了)

財務事務次官のセクハラ疑惑#MeToo(2018.04.24作成)

ついに表に出たか!これまで役人のセクハラ疑惑には、省内で当事者、関係者から話を聞いて、疑念が固まったら、加害者の側(男性)が文句を言わないと踏めば、こっそりと退職させてきた。

 

今回の財務次官のように、セクハラを訴えられている人物が地位も高く、力もあり、うるさそうな相手だと女性に泣き寝入りさせてきた。少なくとも私に対する外務省はそうだった。

 

テレビ朝日の女性記者が上司に訴えても「二次被害が生じるから」と沈黙を迫られた様子は、手に取るように目に浮かぶ。

 

私は浦部和好官房長を信頼して直訴した。それから数日後、私が最も忌み嫌っていた人物である小松一郎人事課長に呼び出された。この人は、集団的自衛権日本国憲法のもとで容認されるという考えで、後に安倍首相が内閣法制局長官に据えることになる。国会では色々な物議をかもした人だ。(下記引用参照)

 

小松人事課長は、浦部官房長から私の訴えを処理するように丸投げされたらしい。官房長は、人事案件では人事課長の直属の上司にあたる。私は官房長を信頼し、官房長だけに告白したのに、その官房長は「逃げて」「部下に漏らした」。丸投げされた小松課長はネチネチと興味本位丸出しで「何をされたのか」「何を言われたのか」と聞いてくる。これこそ「二次被害」だ。ただでさえも言いにくい案件なのに、よりにもよって入省以来蛇蝎のごとく嫌ってきた小松さん相手に話せるもんか。話したくもない。「逃げた」官房長に対する怒りと落胆、小松さんに対す嫌悪感で、ほとんど口を開くこともなく、人事課長室を後にした。

 

私が被害を訴えた相手は、次官にはならなかったが、やめさせられこともなく外務省のメインストリームを歩み続けた。外務省とは、所詮はこの程度の役所なのだ。

財務省も、テレビ朝日も、新潮社もみな同じ穴のむじな。

 

 

2015年5月16日付けハフィントンポスト

3月7日には、共産党小池晃副委員長から「安倍政権の番犬」と参院予算委員会で批判されたことを巡って、別の共産党議員と廊下で口論になり、予算委理事会で謝罪していた

3月11日、自民党が公約としていた国家安全保障基本法制定を「安倍首相は国会に提出する考えはない」と答弁したことが批判され、2日後に陳謝していた

3月25日には参院外交防衛委員会で、持ち込みが禁止されていた携帯電話の画面を読み上げて答弁し、物議を醸したこともあった。

 

                                                                         (了)

 

職員食堂(2018.08.28作成)

道の駅のセルフサービスの食堂は、昭和50年代、60年年代の霞が関の職員食堂を思い出させる。

 

そもそも役所に食堂を構えて賃料を払っていたのかどうかも不明だ。戦後の食糧難の時、役人のために上手に食材を調達してくれた業者がそのまま賃料なしで居ついた、とまことしやかな説を述べる人もいたが、役所に出入りする業者を競争入札で選ぶことになるのは、結構新しい話だ。それでも、幹部の知り合いを有利に扱う「忖度」はいまだにあるかも知れない。

 

一等地に店を構え、昼の開店時から夜遅くまでノンストップ営業で、不特定多数の顧客を相手にする訳ではないので、たとえ賃料が無料でも参入したい業者がいるのかも不明だ。役所の職員食堂の夜の需要は残業手当として出される食券頼みだから、それほど儲かるわけでもないだろう。土日という稼ぎ時があるわけでもない。

 

観光地の道の駅も、銀座や六本木ほど客がいるわけではない。乗客の多い東京の地下鉄の方が、大阪や京都の地下鉄より割安なのと同じだ。田舎の路線バスなど、どんなに高い乗車料金にしても、乗客が絶対的に少なければ、赤字は必至。

 

それでも、警視庁の食堂は美味しいとかで、入館票に訪問目的を書く手間をかけて食べにいく人もいた。そば好きは運輸省(現国土交通省)に毎日通っていた。農水省は、農協から安く食材を提供されているから安い、とかいう都市伝説もあった。

 

経産省の地下鉄直結の廊下に、複数の異なる職員食堂ができたのは、新鮮に映った。外務省も、グリーン食堂と喫茶だけだったのが、複数の食堂を選べるようになった。今ではコンビニが各省庁に入っており、弁当、おにぎり、サンドイッチなど、値段も味も町中と同じで、裏切られることがないので、予算が500円程度なら、コンビニの方がいい。コンビニ側が役所に店舗を構えて、十分収益があがるのかは不明だが。

 

栄養、カロリーに気を配ったタニタの職員食堂が現れ、グーグルのようなIT企業では、食べ放題で無料(コストは給料水準に反映しているのだろう)だと言う。

 

職員食堂のある組織は大企業や役所。小さい組織では、町のコンビニやフードトラック、あるいは弁当持参しかない。職員食堂について不満を言えるのは、むしろ贅沢なことなのだ。                        (了)

 

価格と効用(2018.08.28作成)

300円の牛丼より、浅草今半の1030円のすき焼き弁当の方が、3倍以上おいしいか、と問われると意見が分かれるだろう。

 

近頃は軽自動車も安くはなく、あれやこれやで150万円の軽自動車と400万円クラスの普通車を新車同士で比べると、その効用は3倍以上になる。これくらいの普通車は頑丈で大きいし、アクセルを踏み込まなくてもすぐに加速する。高速道路での安定感も3倍以上だ。税金や有料道路使用料、保険料、ガソリン代は3倍にもならない。が、近場しか移動しない、セカンドカーとしてのみ使うという人にとってみれば、軽自動車の方がvalue for moneyかもしれない。

 

箱根の一泊二食3万円の老舗ホテルと一泊二食6万円の人気旅館では、満足度は2倍以上、6万円の方はまたお金を貯めてもう一度泊まりたいと思ったが、3万円の方は一回で十分。食事の内容、サービス、施設の快適さ等々、大きく違っていた。もちろん、1万円くらいでも満足度の高い宿もある。これはカテゴリーが違うので、部屋と食事と風呂のみ、という宿同士で比較する必要がある。

 

マンションは駅から7分以内で管理が良い物件を選ぶようにと説く方がいる。管理状態はすぐにはわからないので、マンション価格を駅近で比較してみよう。有名な広尾ガーデンヒルズ。棟にもよるし、日比谷線の長い車両のどこに乗車しているか、にもよるが地下鉄車両を降りてから10分以上かかるところもある。エスカレーターやエレベーターが整備されておらず、反対方向への乗り換えは階段を上り下りしなければならない古い地下鉄路線の不便さや、「ヒルズ」の傾斜地に建っているため、公道から玄関まで階段があるバリアぶり。。

 

同じく「ヒルズ」の元麻布など、息を切らして坂道を上ることになる。坂の多い田園調布の一戸建てを売って、元麻布のマンションに引っ越して来たらやはり坂だった、では冗談にならない。夏は辛い。六本木ヒルズはエレベーターが充実しているが、そもそもヒルズ族は地下鉄を利用せず、坂道を歩くこともなく、タクシー、あるいは自家用車か運転手付きで送迎されるから、「駅近」は物件選択の論点ではないらしい。こういう富裕層相手に「駅近がいいですよ」と説くのは、ズレている。 

 

所得水準次第でライフスタイルも変わるから、広尾のナショナル麻布スーパーや、成城石井、六本木けやき坂のLincosで必要なものは買い、そもそも自炊などせず、料理人を抱えているかもしれないし、外食、ケータリングを利用したりするのだろう。六本木ミッドタウンの東急系のプレッセは24時間営業。プレッセではなく、Pricyプライシー(高い)と呼ぶ人もいる。同じ系列の東急ストアで5000円出せば買える量と、プレッセで同種類のもので買える量とは大きく異なる。

 

この季節、一房2000円もするシャインマスカットと、2房500円デラウエアでは、満足度は4倍違うか?というと最初の牛丼と浅草今半との違いと同じ問いになる。シャインマスカットは贈答用と考えれば、どこにでもある2000円程度の菓子折りよりもらった方の満足度は高い。自分ではなかなか思い切って買えないからだ。もちろん、東急ストアでも、プレッセでも自宅用のデラウエアで比較している。袋詰めの人件費や、24時間営業、スーパーの袋1枚3円は加算しない分、全部商品に上乗せされているから、同じ商品でもプレッセの方が必然的に高くなる。

 

マンションの価格の話に戻ろう。運転手付きの生活をするのでない限り、駅近の方が良い。その駅も日比谷線、銀座線のような古い地下鉄の駅より、南北線半蔵門線のような新線の方がバリアフリー化が進んでいる。私鉄でも、資金力のある鉄道会社の駅の方が、バリアフリー化が進み、踏切をやめ高架になり、遅延が少なくなる。

 

価格が下がらないマンションだからといってヒルズにある物件を無理して買っても、自分のライフスタイルに合わないなら満足度は低い。自分が住むのではなく投資物件としては賢い選択かも知れないが、人に貸し、将来はキャピタルゲインを狙って売却するために一億も二億も出すより、自分が住んでいる手頃な駅近物件を床暖房にするとか、断熱や耐震にお金をかければ、日々効用が得られる。せいぜい数百万円程度だろう。不動産にかけるお金の比較としては、満足度ははるかに高い。

 

つまらない話かも知れないが、窓のある一戸建ての風呂なら、換気扇を使わなくてもカビ知らず。マンションにたどり着いても、エレベーター待ちのイライラもない。皆、コロッと忘れているが、3.11の直後はエレベーターは停まり、その後も節電で高層マンションは稼働するエレベーターの基数を減らしていた。タワマンの高層階の揺れの恐ろしさが問われないとは、防災意識の風化はひどいものがある。

 

エルメスのバッグは値段が下がらないそうだ。重たくて使い勝手が悪くても、最新モデルのバッグを1-2年使い、流行おくれになる前に売りに出す。値下がりや中古品売買手数料を含めて10万円以上かかったとしても、10万円のバッグを買うより満足度は高いのだろうか?重くても平気、いつも車で移動するから。使い勝手が悪くても問題なし。バッグの中にそれほどモノを入れる必要もないから。ということだろうか?

 

これも個人のライフスタイル次第だ。自分に合った、自分の日常の満足度が高いモノを手に入れればよい。バッグであれ不動産であれ。

 

駅から遠くて、管理の悪い物件はもちろん避けるべきだろう。だからと言って、誰もが港、中央、千代田区に住んで高い満足度が得られるわけではないのだ。  (了)

18歳の女の子がウソをつくはずがない(2018.08.31作成)

若い女性に対する、根拠なき好意的な見方に驚く。8月29日の女子体操宮川紗江選手の記者会見での発言についての、日本体操協会具志堅幸司副会長のコメントだ。同じ肩書の塚原光男副会長が前日、「彼女の発言はウソ」という趣旨のコメントをしたことを受けての反応のようだ。

 

10年以上前、瀋陽にある日本総領事館脱北者一家が逃げ込んだ際、「女性がそんなことをする訳がない」という趣旨の発言をした人もいる。国会議員だったか、テレビのコメンテーターだったか。

 

女スパイは昔からいる。女子工作員によるハニートラップに簡単にかかりそうな人が日本では枢要な地位についているのだ。あぶない、あぶない。

 

女性に対する根拠のない好意的な見方の一方、東京女子医大では、女性受験生は一律に減点していたという。私が外務省を受験したのは40年以上前だが、「結婚したらどうするのか」という今ではNGの質問も面接官から発せられた。海外勤務が当然の外務省では、女性の合格者を意図的に出さないようにしている、と言われていた。

 

あれから40数年、もう時代は変わったのだろうと思っていたら、女子受験生の減点に加え、女性はそんなことをするはずはないという、的外れの意見。ため息が出る。

 

ところで、ツイッタートランプ大統領をフォローしている。ほとんどまともに読んだことはないが、最近メラニア夫人がスコップを持って穴を掘っている写真を、大統領が誇らしげに掲載していた。大きな花柄のノースリーブのブラウスにピンクのフレアスカート、10センチ以上はあるかというピンクのピンヒールを履いての穴掘りである。ブロンドの長い髪をたらし、整形したアンジェリーナ・ジョリー叶恭子のクローンのような顔で、何世紀にもわたり中国女性の自由を奪ってきた纏足を彷彿させるピンヒール。

 

これが人類史上、女性が自らの自由を謳歌し、権利を獲得するために最も活動してきた国である米国のファーストレディの姿である。米国で女性であることも大変なのだ。日本だけの問題ではないが、在日米国人特派員は、相変わらず日本女性が虐げられていると報じるのだろうけど。      (了)

 

災害時の救済―優先順位は?(2018.09.10作成)

9月4日、台風21号が関西に残した惨状に驚いている最中、北海道で震度6強の地震

 

人間の歴史は、自然災害の被害を少なくし、最大の人的災害である戦争勃発を抑止するかであった。

 

都市と地方のいずれが自然災害に強いか、という論争がある。大阪、神戸、京都という大都市を抱える関西を最強台風が直撃して死者10名。7月に岡山や広島を襲った豪雨での死者は200名以上。

 

関空の復旧はどれくらい時間がかかるのだろう。海面に浮かぶ人工島だから浸水は想定内だったのだろうが、タンカーが連絡橋に衝突する、という事故が重なった。人工島の被害は、土砂崩れや川の氾濫が予想される地域を宅地開発して生活していたという岡山、広島の被害拡大に通じるものがある。もともとリスクはあったのだ。それでも24時間発着可能な空港は、インバウンド観光客による関西経済圏の活気に繋がっていた。伊丹空港では、インバウンド効果は得られなかっただろう。

 

最近、ルフトハンザ航空のオーバーブッキングでひどい目にあった、という体験者の報告を目にしたが、関空に閉じ込められた3-5000人もの客や従業員を、台風の翌日早朝から高速船で神戸に運んでいるニュースを目にすると、危機管理は機能しているとうれしくなる。1航空会社だけの問題と空港機能全体の問題は一律に比較できないが、時間が来たら有無を言わず作業を打ち切るドイツ人と、サービス残業もいとわない日本人との差も垣間見られる。不眠不休で働いた関係者には、相応の対価を払ってあげて欲しい。

 

地方での自然災害というと、数年前、白馬村地震に遭遇した。実際倒壊する家屋も多数あったが、死者はゼロ。普段からご近所で声を掛け合っているので、避難所に誰かがいないとすぐにわかり、救援にかけつけることができたから、という後日談を現地の方から聞いた。これには、「絆」は言いかえれば「しがらみ」ともなるという見方ができる。白馬村では、年間6-7万円もの自治会費を納めないと、地域のゴミ集積所も利用させてもらえないらしい。地方の村では普通のことだという。7万円納めていれば、ゴミも捨てられるし、何かあった時の声かけもしてもらえる、ということだ。

 

ともあれ、首都直下型地震南海トラフの可能性は現実の今そこにある危機大規模災害の際、誰をどこまで優先順位をつけて助けるか、という議論は、官邸の奥では秘密裡にされているのかも知れない。最近この問題につながる3つの事件があった。

 

1.終末医療施設のエアコンが壊れて、年配者が亡くなった

2.障碍者施設で多くの障碍者を殺傷した受刑者が本を出版するという

3.杉田水脈参議院議員の、「LGTBの人は生産性がない」という「新潮45」への寄稿

 

人間に優越はない。緊急事態でもないのに、あの人たちは生産性が低いから税金で支援する必要はないと主張し、自分の子どもは一人だけで「再生産レベルに達っしていない」国会議員はまことに困ったちゃんだ。が、本来平等であるべき人間をどうしても選別せざるをえない緊急事態において、より多くの人を救える方法や全体利益をいかに増大させるかについては、バッシング、炎上覚悟で議論しておいた方がよい。

 

飛行機に乗ると、毎回救命器具の使い方説明がある。子ども同伴の場合、まず親(保護者)が救命器具を確実に着けてから、子どもの装着にかかれと言う。①親も子どもも助かる、②親だけ助かる、③親も子どもも命を失う、という三つの可能性の中で、まず親が助かる準備をすることで①の可能性を高める。納得できる。

 

東西冷戦の頃、ロシアによる核攻撃が現実ものであった永世中立国スイスでは、各住戸が核シェルターを設けることを義務付けていた。そして、核兵器が使用された場合は、人口の3割が助かればよい、という歩留まりを想定していたという。日本なら、全員救助、という現実的でないことを表向きは言わざるを得ないのだろう。

 

一時流行ったハーバード熱烈教室で、マイケル・サンデル教授は「正義の話」の一つに、危険にさらされているのは二人だが、一人しか助けられないときどうするか、を議論の例に取り上げていた。

 

都市と地方の話にもどれば、東京都港区の何億円もする高級マンションは、最新鋭の免震構造の建物で防災センターがあり、マンション住民のため食料、水を備蓄し、自家発電装置まであるそうだ。大規模自然災害の際でも、高収入で、稼ぐ力の強いこういうマンションに住む人は生き延びる可能性が高い。こういう稼げる人たちが復興に寄与してくれる、ということか。わざわざ政府が物議をかもして救済の優先順位をつけなくとも、自ずと選別されているということなのだろう。千代田区、港区、中央区に本社を置く法人の税収も相当な割合を占める。都心3区に住まない私だが、それでいいと思う。

                             (了)