パブリック・ディプロマシー日本外交に望むこと

34年間の外交官生活を振り返って

職員食堂(2018.08.28作成)

道の駅のセルフサービスの食堂は、昭和50年代、60年年代の霞が関の職員食堂を思い出させる。

 

そもそも役所に食堂を構えて賃料を払っていたのかどうかも不明だ。戦後の食糧難の時、役人のために上手に食材を調達してくれた業者がそのまま賃料なしで居ついた、とまことしやかな説を述べる人もいたが、役所に出入りする業者を競争入札で選ぶことになるのは、結構新しい話だ。それでも、幹部の知り合いを有利に扱う「忖度」はいまだにあるかも知れない。

 

一等地に店を構え、昼の開店時から夜遅くまでノンストップ営業で、不特定多数の顧客を相手にする訳ではないので、たとえ賃料が無料でも参入したい業者がいるのかも不明だ。役所の職員食堂の夜の需要は残業手当として出される食券頼みだから、それほど儲かるわけでもないだろう。土日という稼ぎ時があるわけでもない。

 

観光地の道の駅も、銀座や六本木ほど客がいるわけではない。乗客の多い東京の地下鉄の方が、大阪や京都の地下鉄より割安なのと同じだ。田舎の路線バスなど、どんなに高い乗車料金にしても、乗客が絶対的に少なければ、赤字は必至。

 

それでも、警視庁の食堂は美味しいとかで、入館票に訪問目的を書く手間をかけて食べにいく人もいた。そば好きは運輸省(現国土交通省)に毎日通っていた。農水省は、農協から安く食材を提供されているから安い、とかいう都市伝説もあった。

 

経産省の地下鉄直結の廊下に、複数の異なる職員食堂ができたのは、新鮮に映った。外務省も、グリーン食堂と喫茶だけだったのが、複数の食堂を選べるようになった。今ではコンビニが各省庁に入っており、弁当、おにぎり、サンドイッチなど、値段も味も町中と同じで、裏切られることがないので、予算が500円程度なら、コンビニの方がいい。コンビニ側が役所に店舗を構えて、十分収益があがるのかは不明だが。

 

栄養、カロリーに気を配ったタニタの職員食堂が現れ、グーグルのようなIT企業では、食べ放題で無料(コストは給料水準に反映しているのだろう)だと言う。

 

職員食堂のある組織は大企業や役所。小さい組織では、町のコンビニやフードトラック、あるいは弁当持参しかない。職員食堂について不満を言えるのは、むしろ贅沢なことなのだ。                        (了)