パブリック・ディプロマシー日本外交に望むこと

34年間の外交官生活を振り返って

京都和久傳でメラニア・トランプを思い出した

4月のある金曜の夕方京都に着いた。翌日何をたべようかと考え、京都駅伊勢丹にある和久傳というちょっと有名な和食の店を予約した。土曜なのに運が良かった。ひとりだからかも。

 

土曜の商業施設でエレベーターで11階まで上がるのは、ある程度余裕をみておかないといけない。満杯のエレベーターに乗り、11時過ぎには和久傳に着いた。「本日は予約で満室です」という掲示が表に出ていた。私のように金曜の夜慌てて予約した人が多かったのだろう。

 

カウンター席の右端に案内された。ありがたい。雨でけぶっているが、一応京都市街が見渡せる席だ。左隣の2席の客はまだ現れず、その向こうにやはり一人の女性が座っていた。

丁寧な料理が少しづつ出される。3品目くらいで左の席の客が来た。男女のカップルだ。齢が離れている。横顔のシミが目立つ白髪頭の70歳前後の男性。女性はその向こうだからよく見えないが、50前後だろうか。ずっと帽子をかぶっている。自然と耳に届く会話から、夫婦ではなのがわかる。ドバイに出張とか、社長とかいう言葉が断片的に聞こえる。私ももう一人のお一人様女性も、同じメニューらしい。席を予約できるメニューの中で1番安いコースの7000円。

対して、不倫っぽいカップルはおまかせコース。三重県桑名のハマグリとか若鮎とか、料理人が説明している。大きな朝掘りのタケノコを、料理人がわざわざこの客に見せに来た。最後のご飯ものをタケノコごはんにしたらしい。食事が終わって店を出る時に、おまかせコースの値段を確認したら20000円だった。帽子をかぶったままの同伴女性はシャンパンを注文していた。店にとれば大変な上客だろう。

 

じいさんに同伴して高いメニューにシャンパンを楽しむ。こういう女性の生き方もあるのだ。トランプさんが大統領だった4年間、メラニア夫人が登場する度、こんな女性の生き方は絶対イヤ、と思ったものだ。メラニアさんはヨーロッパの小国から移民で米国にやってきて、大金持ちのじいさんに見初められた。そうなるには才能も魅力も必要だ。あちこち整形手術しているのだろうけど、土台がよくなければ最先端の医学でもスタイル抜群の美人にはなれない。手足が伸びるわけでもないし、小顔手術で医療ミス問題まで起きている。だからメラニアさんも女性のひとつのカテゴリーにおけるトップ0.01%の人なんだろうけど、ヒヒオヤジの言いなりになんかなりたくない。

 

自分で稼ぐんだ。「思う人とは結ばれず、思わぬ人の言うまま気まま」という歌詞の歌が昔あった。女性の生き方が母の世代と比較にならぬほど多様になった今、自分で稼いで自由に生きる女性と、夫の権力、金力を上手に使ってのし上がる女性との間の分断も顕在化してきた。

 

(2023年4月15日記)