パブリック・ディプロマシー日本外交に望むこと

34年間の外交官生活を振り返って

カルロス・ゴーン逮捕(2018.12.03作成)

日産の会長だったゴーンさんが逮捕されて2週間。

 

2016年秋、友人の息子さんの結婚式に参加するためフランスに行った。フランス訪問がこれが最後ならもう一度行ってみたい、と思っていたドルドーニュ地方を回ることにした。鉄道の便が悪い地方だ。

 

そこで借りた車が日産インフィニティ。事前予約の際、「アウディまたは同等の車」となっていた。恥ずかしながらインフィニティがどこのメーカーの車か知らなかった。が、運転してみてその快適さに感動した。帰国後、5000キロも走っていないホンダのNoneを売り、インフィニティではないが、同等の車に買い替えた。軽自動車でいいじゃないか、そんなに運転が好きでもないし、ホンダが本腰を入れて発表した可愛い軽自動車、何より自動車税が安いし、駐車しやすいし、と思っていた。軽なのに結構高かった。

 

それでも決意して買い替えた車は、値段は2倍以上したが、満足度は何倍も高くなった。高速道路を走るとき、加速が違う。鋼鉄に守られているという安心感もある。重い車の方が本当に安全なのかどうかはわからないが、気分が違うのだ。運転が下手な自分でも違いが判る。

 

フランスで運転した日産車には、そんな思い出がある。

 

2017年の秋学期の講義では、その年の1月の日経新聞私の履歴書」がゴーンさんだったので。グローバル人材という視点から、学生には読むように指示した。学生には当時の新聞が手元になくても、図書館で新聞の縮刷版の記事を探す経験をしてほしいという意味もあったが、主たる目的は、レバノン人で、ブラジルで育ち、フランスで勉強し、就職し、そして日本企業の再生に携わった、というこの上ないグローバルな人材の経験談を学生に知って欲しかったからだ。

 

報道で知るゴーンさんの蓄財欲は、本当がどうかわからない。個人的には「推定無罪」を貫く方が、人権を重んじる制度だと思う。が、ルノーの収益の半分は日産の貢献、ルノーの43%の日産持ち株は議決権があるのに、日産のルノーに対する15%には議決権がなく対等ではないと聞くと、ニッポンバイアスの視点=ルノー、その背後のフランス政府が悪い、日産の怒りは当然、という見方になってしまう。。

 

ルノー出身のフランス人役員は1か月も休みを取るのに、日本人の役員より報酬が多い、という報道もある。何十年も前からある「日本人が休みも取らず働いているのに」という恨み節に同情するとともに、自分たちも休めるようにすればいいのに、と働き方改革を自ら勝ち取ろうとしない同胞に若干ふがいなさも感じる。

 

それはともかく、ゴーンさんは最初の妻とは離婚していたと聞いて合点がいった。最初の妻との4人の子どもは、日本にいた頃はアメリカン・スクール・イン・ジャパンに通っていたという噂を聞いたことがある。その妻と別れ、ベルサイユ宮殿で結婚式を挙げた再婚相手は、ご多分に漏れずかなり年下らしい。「アラブの春」の引き金になったチュニジアのベン=アリ大統領の失脚前の悪評は、もっぱら若い再婚相手とその一族郎党の悪行に起因していた。糟糠の妻と別れ、若い女性と再婚し晩節を汚すのは、古今東西既視感がある。自身の権勢欲の高まりにおねだり妻が加わり、公私混同に拍車がかかる。ゴーンさんもただのオッサンだった、ということなのだろう。 

 

ブログ開設(当時は別のサイト)の第一号エントリーは、再婚若妻とその一族のハチャメチャに翻弄されたチュニジア大統領の国外逃亡劇についてだった。こちらをどうぞ。

 

カルタゴの女摂政―チュニジアの政変について(2011.01.25作成) - パブリック・ディプロマシー日本外交に望むこと

  (了)