パブリック・ディプロマシー日本外交に望むこと

34年間の外交官生活を振り返って

財務事務次官のセクハラ疑惑#MeToo(2018.04.24作成)

ついに表に出たか!これまで役人のセクハラ疑惑には、省内で当事者、関係者から話を聞いて、疑念が固まったら、加害者の側(男性)が文句を言わないと踏めば、こっそりと退職させてきた。

 

今回の財務次官のように、セクハラを訴えられている人物が地位も高く、力もあり、うるさそうな相手だと女性に泣き寝入りさせてきた。少なくとも私に対する外務省はそうだった。

 

テレビ朝日の女性記者が上司に訴えても「二次被害が生じるから」と沈黙を迫られた様子は、手に取るように目に浮かぶ。

 

私は浦部和好官房長を信頼して直訴した。それから数日後、私が最も忌み嫌っていた人物である小松一郎人事課長に呼び出された。この人は、集団的自衛権日本国憲法のもとで容認されるという考えで、後に安倍首相が内閣法制局長官に据えることになる。国会では色々な物議をかもした人だ。(下記引用参照)

 

小松人事課長は、浦部官房長から私の訴えを処理するように丸投げされたらしい。官房長は、人事案件では人事課長の直属の上司にあたる。私は官房長を信頼し、官房長だけに告白したのに、その官房長は「逃げて」「部下に漏らした」。丸投げされた小松課長はネチネチと興味本位丸出しで「何をされたのか」「何を言われたのか」と聞いてくる。これこそ「二次被害」だ。ただでさえも言いにくい案件なのに、よりにもよって入省以来蛇蝎のごとく嫌ってきた小松さん相手に話せるもんか。話したくもない。「逃げた」官房長に対する怒りと落胆、小松さんに対す嫌悪感で、ほとんど口を開くこともなく、人事課長室を後にした。

 

私が被害を訴えた相手は、次官にはならなかったが、やめさせられこともなく外務省のメインストリームを歩み続けた。外務省とは、所詮はこの程度の役所なのだ。

財務省も、テレビ朝日も、新潮社もみな同じ穴のむじな。

 

 

2015年5月16日付けハフィントンポスト

3月7日には、共産党小池晃副委員長から「安倍政権の番犬」と参院予算委員会で批判されたことを巡って、別の共産党議員と廊下で口論になり、予算委理事会で謝罪していた

3月11日、自民党が公約としていた国家安全保障基本法制定を「安倍首相は国会に提出する考えはない」と答弁したことが批判され、2日後に陳謝していた

3月25日には参院外交防衛委員会で、持ち込みが禁止されていた携帯電話の画面を読み上げて答弁し、物議を醸したこともあった。

 

                                                                         (了)

 

職員食堂(2018.08.28作成)

道の駅のセルフサービスの食堂は、昭和50年代、60年年代の霞が関の職員食堂を思い出させる。

 

そもそも役所に食堂を構えて賃料を払っていたのかどうかも不明だ。戦後の食糧難の時、役人のために上手に食材を調達してくれた業者がそのまま賃料なしで居ついた、とまことしやかな説を述べる人もいたが、役所に出入りする業者を競争入札で選ぶことになるのは、結構新しい話だ。それでも、幹部の知り合いを有利に扱う「忖度」はいまだにあるかも知れない。

 

一等地に店を構え、昼の開店時から夜遅くまでノンストップ営業で、不特定多数の顧客を相手にする訳ではないので、たとえ賃料が無料でも参入したい業者がいるのかも不明だ。役所の職員食堂の夜の需要は残業手当として出される食券頼みだから、それほど儲かるわけでもないだろう。土日という稼ぎ時があるわけでもない。

 

観光地の道の駅も、銀座や六本木ほど客がいるわけではない。乗客の多い東京の地下鉄の方が、大阪や京都の地下鉄より割安なのと同じだ。田舎の路線バスなど、どんなに高い乗車料金にしても、乗客が絶対的に少なければ、赤字は必至。

 

それでも、警視庁の食堂は美味しいとかで、入館票に訪問目的を書く手間をかけて食べにいく人もいた。そば好きは運輸省(現国土交通省)に毎日通っていた。農水省は、農協から安く食材を提供されているから安い、とかいう都市伝説もあった。

 

経産省の地下鉄直結の廊下に、複数の異なる職員食堂ができたのは、新鮮に映った。外務省も、グリーン食堂と喫茶だけだったのが、複数の食堂を選べるようになった。今ではコンビニが各省庁に入っており、弁当、おにぎり、サンドイッチなど、値段も味も町中と同じで、裏切られることがないので、予算が500円程度なら、コンビニの方がいい。コンビニ側が役所に店舗を構えて、十分収益があがるのかは不明だが。

 

栄養、カロリーに気を配ったタニタの職員食堂が現れ、グーグルのようなIT企業では、食べ放題で無料(コストは給料水準に反映しているのだろう)だと言う。

 

職員食堂のある組織は大企業や役所。小さい組織では、町のコンビニやフードトラック、あるいは弁当持参しかない。職員食堂について不満を言えるのは、むしろ贅沢なことなのだ。                        (了)

 

価格と効用(2018.08.28作成)

300円の牛丼より、浅草今半の1030円のすき焼き弁当の方が、3倍以上おいしいか、と問われると意見が分かれるだろう。

 

近頃は軽自動車も安くはなく、あれやこれやで150万円の軽自動車と400万円クラスの普通車を新車同士で比べると、その効用は3倍以上になる。これくらいの普通車は頑丈で大きいし、アクセルを踏み込まなくてもすぐに加速する。高速道路での安定感も3倍以上だ。税金や有料道路使用料、保険料、ガソリン代は3倍にもならない。が、近場しか移動しない、セカンドカーとしてのみ使うという人にとってみれば、軽自動車の方がvalue for moneyかもしれない。

 

箱根の一泊二食3万円の老舗ホテルと一泊二食6万円の人気旅館では、満足度は2倍以上、6万円の方はまたお金を貯めてもう一度泊まりたいと思ったが、3万円の方は一回で十分。食事の内容、サービス、施設の快適さ等々、大きく違っていた。もちろん、1万円くらいでも満足度の高い宿もある。これはカテゴリーが違うので、部屋と食事と風呂のみ、という宿同士で比較する必要がある。

 

マンションは駅から7分以内で管理が良い物件を選ぶようにと説く方がいる。管理状態はすぐにはわからないので、マンション価格を駅近で比較してみよう。有名な広尾ガーデンヒルズ。棟にもよるし、日比谷線の長い車両のどこに乗車しているか、にもよるが地下鉄車両を降りてから10分以上かかるところもある。エスカレーターやエレベーターが整備されておらず、反対方向への乗り換えは階段を上り下りしなければならない古い地下鉄路線の不便さや、「ヒルズ」の傾斜地に建っているため、公道から玄関まで階段があるバリアぶり。。

 

同じく「ヒルズ」の元麻布など、息を切らして坂道を上ることになる。坂の多い田園調布の一戸建てを売って、元麻布のマンションに引っ越して来たらやはり坂だった、では冗談にならない。夏は辛い。六本木ヒルズはエレベーターが充実しているが、そもそもヒルズ族は地下鉄を利用せず、坂道を歩くこともなく、タクシー、あるいは自家用車か運転手付きで送迎されるから、「駅近」は物件選択の論点ではないらしい。こういう富裕層相手に「駅近がいいですよ」と説くのは、ズレている。 

 

所得水準次第でライフスタイルも変わるから、広尾のナショナル麻布スーパーや、成城石井、六本木けやき坂のLincosで必要なものは買い、そもそも自炊などせず、料理人を抱えているかもしれないし、外食、ケータリングを利用したりするのだろう。六本木ミッドタウンの東急系のプレッセは24時間営業。プレッセではなく、Pricyプライシー(高い)と呼ぶ人もいる。同じ系列の東急ストアで5000円出せば買える量と、プレッセで同種類のもので買える量とは大きく異なる。

 

この季節、一房2000円もするシャインマスカットと、2房500円デラウエアでは、満足度は4倍違うか?というと最初の牛丼と浅草今半との違いと同じ問いになる。シャインマスカットは贈答用と考えれば、どこにでもある2000円程度の菓子折りよりもらった方の満足度は高い。自分ではなかなか思い切って買えないからだ。もちろん、東急ストアでも、プレッセでも自宅用のデラウエアで比較している。袋詰めの人件費や、24時間営業、スーパーの袋1枚3円は加算しない分、全部商品に上乗せされているから、同じ商品でもプレッセの方が必然的に高くなる。

 

マンションの価格の話に戻ろう。運転手付きの生活をするのでない限り、駅近の方が良い。その駅も日比谷線、銀座線のような古い地下鉄の駅より、南北線半蔵門線のような新線の方がバリアフリー化が進んでいる。私鉄でも、資金力のある鉄道会社の駅の方が、バリアフリー化が進み、踏切をやめ高架になり、遅延が少なくなる。

 

価格が下がらないマンションだからといってヒルズにある物件を無理して買っても、自分のライフスタイルに合わないなら満足度は低い。自分が住むのではなく投資物件としては賢い選択かも知れないが、人に貸し、将来はキャピタルゲインを狙って売却するために一億も二億も出すより、自分が住んでいる手頃な駅近物件を床暖房にするとか、断熱や耐震にお金をかければ、日々効用が得られる。せいぜい数百万円程度だろう。不動産にかけるお金の比較としては、満足度ははるかに高い。

 

つまらない話かも知れないが、窓のある一戸建ての風呂なら、換気扇を使わなくてもカビ知らず。マンションにたどり着いても、エレベーター待ちのイライラもない。皆、コロッと忘れているが、3.11の直後はエレベーターは停まり、その後も節電で高層マンションは稼働するエレベーターの基数を減らしていた。タワマンの高層階の揺れの恐ろしさが問われないとは、防災意識の風化はひどいものがある。

 

エルメスのバッグは値段が下がらないそうだ。重たくて使い勝手が悪くても、最新モデルのバッグを1-2年使い、流行おくれになる前に売りに出す。値下がりや中古品売買手数料を含めて10万円以上かかったとしても、10万円のバッグを買うより満足度は高いのだろうか?重くても平気、いつも車で移動するから。使い勝手が悪くても問題なし。バッグの中にそれほどモノを入れる必要もないから。ということだろうか?

 

これも個人のライフスタイル次第だ。自分に合った、自分の日常の満足度が高いモノを手に入れればよい。バッグであれ不動産であれ。

 

駅から遠くて、管理の悪い物件はもちろん避けるべきだろう。だからと言って、誰もが港、中央、千代田区に住んで高い満足度が得られるわけではないのだ。  (了)

18歳の女の子がウソをつくはずがない(2018.08.31作成)

若い女性に対する、根拠なき好意的な見方に驚く。8月29日の女子体操宮川紗江選手の記者会見での発言についての、日本体操協会具志堅幸司副会長のコメントだ。同じ肩書の塚原光男副会長が前日、「彼女の発言はウソ」という趣旨のコメントをしたことを受けての反応のようだ。

 

10年以上前、瀋陽にある日本総領事館脱北者一家が逃げ込んだ際、「女性がそんなことをする訳がない」という趣旨の発言をした人もいる。国会議員だったか、テレビのコメンテーターだったか。

 

女スパイは昔からいる。女子工作員によるハニートラップに簡単にかかりそうな人が日本では枢要な地位についているのだ。あぶない、あぶない。

 

女性に対する根拠のない好意的な見方の一方、東京女子医大では、女性受験生は一律に減点していたという。私が外務省を受験したのは40年以上前だが、「結婚したらどうするのか」という今ではNGの質問も面接官から発せられた。海外勤務が当然の外務省では、女性の合格者を意図的に出さないようにしている、と言われていた。

 

あれから40数年、もう時代は変わったのだろうと思っていたら、女子受験生の減点に加え、女性はそんなことをするはずはないという、的外れの意見。ため息が出る。

 

ところで、ツイッタートランプ大統領をフォローしている。ほとんどまともに読んだことはないが、最近メラニア夫人がスコップを持って穴を掘っている写真を、大統領が誇らしげに掲載していた。大きな花柄のノースリーブのブラウスにピンクのフレアスカート、10センチ以上はあるかというピンクのピンヒールを履いての穴掘りである。ブロンドの長い髪をたらし、整形したアンジェリーナ・ジョリー叶恭子のクローンのような顔で、何世紀にもわたり中国女性の自由を奪ってきた纏足を彷彿させるピンヒール。

 

これが人類史上、女性が自らの自由を謳歌し、権利を獲得するために最も活動してきた国である米国のファーストレディの姿である。米国で女性であることも大変なのだ。日本だけの問題ではないが、在日米国人特派員は、相変わらず日本女性が虐げられていると報じるのだろうけど。      (了)

 

災害時の救済―優先順位は?(2018.09.10作成)

9月4日、台風21号が関西に残した惨状に驚いている最中、北海道で震度6強の地震

 

人間の歴史は、自然災害の被害を少なくし、最大の人的災害である戦争勃発を抑止するかであった。

 

都市と地方のいずれが自然災害に強いか、という論争がある。大阪、神戸、京都という大都市を抱える関西を最強台風が直撃して死者10名。7月に岡山や広島を襲った豪雨での死者は200名以上。

 

関空の復旧はどれくらい時間がかかるのだろう。海面に浮かぶ人工島だから浸水は想定内だったのだろうが、タンカーが連絡橋に衝突する、という事故が重なった。人工島の被害は、土砂崩れや川の氾濫が予想される地域を宅地開発して生活していたという岡山、広島の被害拡大に通じるものがある。もともとリスクはあったのだ。それでも24時間発着可能な空港は、インバウンド観光客による関西経済圏の活気に繋がっていた。伊丹空港では、インバウンド効果は得られなかっただろう。

 

最近、ルフトハンザ航空のオーバーブッキングでひどい目にあった、という体験者の報告を目にしたが、関空に閉じ込められた3-5000人もの客や従業員を、台風の翌日早朝から高速船で神戸に運んでいるニュースを目にすると、危機管理は機能しているとうれしくなる。1航空会社だけの問題と空港機能全体の問題は一律に比較できないが、時間が来たら有無を言わず作業を打ち切るドイツ人と、サービス残業もいとわない日本人との差も垣間見られる。不眠不休で働いた関係者には、相応の対価を払ってあげて欲しい。

 

地方での自然災害というと、数年前、白馬村地震に遭遇した。実際倒壊する家屋も多数あったが、死者はゼロ。普段からご近所で声を掛け合っているので、避難所に誰かがいないとすぐにわかり、救援にかけつけることができたから、という後日談を現地の方から聞いた。これには、「絆」は言いかえれば「しがらみ」ともなるという見方ができる。白馬村では、年間6-7万円もの自治会費を納めないと、地域のゴミ集積所も利用させてもらえないらしい。地方の村では普通のことだという。7万円納めていれば、ゴミも捨てられるし、何かあった時の声かけもしてもらえる、ということだ。

 

ともあれ、首都直下型地震南海トラフの可能性は現実の今そこにある危機大規模災害の際、誰をどこまで優先順位をつけて助けるか、という議論は、官邸の奥では秘密裡にされているのかも知れない。最近この問題につながる3つの事件があった。

 

1.終末医療施設のエアコンが壊れて、年配者が亡くなった

2.障碍者施設で多くの障碍者を殺傷した受刑者が本を出版するという

3.杉田水脈参議院議員の、「LGTBの人は生産性がない」という「新潮45」への寄稿

 

人間に優越はない。緊急事態でもないのに、あの人たちは生産性が低いから税金で支援する必要はないと主張し、自分の子どもは一人だけで「再生産レベルに達っしていない」国会議員はまことに困ったちゃんだ。が、本来平等であるべき人間をどうしても選別せざるをえない緊急事態において、より多くの人を救える方法や全体利益をいかに増大させるかについては、バッシング、炎上覚悟で議論しておいた方がよい。

 

飛行機に乗ると、毎回救命器具の使い方説明がある。子ども同伴の場合、まず親(保護者)が救命器具を確実に着けてから、子どもの装着にかかれと言う。①親も子どもも助かる、②親だけ助かる、③親も子どもも命を失う、という三つの可能性の中で、まず親が助かる準備をすることで①の可能性を高める。納得できる。

 

東西冷戦の頃、ロシアによる核攻撃が現実ものであった永世中立国スイスでは、各住戸が核シェルターを設けることを義務付けていた。そして、核兵器が使用された場合は、人口の3割が助かればよい、という歩留まりを想定していたという。日本なら、全員救助、という現実的でないことを表向きは言わざるを得ないのだろう。

 

一時流行ったハーバード熱烈教室で、マイケル・サンデル教授は「正義の話」の一つに、危険にさらされているのは二人だが、一人しか助けられないときどうするか、を議論の例に取り上げていた。

 

都市と地方の話にもどれば、東京都港区の何億円もする高級マンションは、最新鋭の免震構造の建物で防災センターがあり、マンション住民のため食料、水を備蓄し、自家発電装置まであるそうだ。大規模自然災害の際でも、高収入で、稼ぐ力の強いこういうマンションに住む人は生き延びる可能性が高い。こういう稼げる人たちが復興に寄与してくれる、ということか。わざわざ政府が物議をかもして救済の優先順位をつけなくとも、自ずと選別されているということなのだろう。千代田区、港区、中央区に本社を置く法人の税収も相当な割合を占める。都心3区に住まない私だが、それでいいと思う。

                             (了)

大坂なおみ、セリーナ・ウイリアムズ(2018.09.10作成)

2018年9月9日の日曜の朝、素敵なニュースが飛び込んできた。母親が日本人の大阪生まれ、おじいさんが北海道に住む大坂選手がテニス全米オープンで優勝したのだ。

 

先週、関西は強い台風で被害甚大、そして北海道は震度7地震に見舞われた。暗いニュースの中で、近畿と北海道に何等かの繋がりのある選手の優勝は嬉しいことだ。

 

3歳からずっと米国に住み、日本語はかわいらしい片言、身長180センチ、褐色の肌。昨年、英国籍のカズオ・イシグロ氏が英語で書いた小説でノーベル文学賞を受賞した時、「ルーツが外国にあると日本国籍でも犯罪者ならガイジン、外国籍でも栄誉を得れば日本人」とする傾向について、批判的な見方があった。

 

大坂選手は日本国籍、スポンサーは日清食品。錦織選手のユニクロのロゴがついたテニスウエアも嬉しいが、スリムで筋肉質の大坂選手がまとう黒のウエアについた赤い日清食品のロゴも印象的。ユニクロジョコビッチ選手のスポンサーでもあるが、錦織選手が14連敗する天敵No1なので、ちょっと複雑だ。錦織選手も大坂選手もヨネックスのラケットを使っている。日本以外の国で製造されているのかもしれないが、日本メーカーというだけで嬉しくなる。多分、アメリカ人もフランス人も中国人も自国メーカーや製品について同じように感じる人が多いのだろう。貿易戦争が起こるゆえんだ。

 

決勝でセリーナ・ウイリアムズと対戦するなんて、本人も言っていたがすごいことだ。今回の決勝は、主審に対する批判が集まった後味の悪いものだったが、セリーナの主審への言い分や、試合後の大坂選手への対応、表彰式で観客の主審に対するブーイング制止を求める発言はさすが「元女王」の貫禄。

 

テニスのトップ選手は白人が多い中で、黒人のウイリアムズ姉妹は嫌な思いもしてきただろうと思う。主審に「私は人生で一度もずるいことをしていない」と懸命に抗議していたが、その昔「悪ガキ」と言われた米国人選手マッケンローもよく主審に暴言を吐いていた。どの選手も勝負、賞金、名誉をかけて戦っている。

 

セリーナ選手は、主審の自分への過剰なペナルティは女性蔑視だと主張しているようだ。米国紙の見出しにはsexistという文字も踊っている。「白人で男性である自分が、黒人で、しかも女性に暴言を吐かれる言われるいわれはない」と主審が心の奥底で思っていない、とは誰が断言できようか?

 

私はたまたま黄色人種で女性に生まれた。白人や男性という歴史上優越地位にい続けてきた人々の中で行動するとき、この人は人種差別主義者かもしれない、女性差別主義者かもしれない、という恐怖心が常にどこかにある。トランプ現象の底流はなんとなくわかる。セリーナ選手も感じてきたのだろう。若い大坂選手は天真爛漫で、セリーナより16歳も年下だから、時代は少し好転しているのかもしれない。

 

女子テニスの賞金額が男子のそれと同じようになるまで、大坂選手には頑張って欲しい。確かに、女子は2セット取れば勝ち。錦織選手が時々フルセットで5時間に及ぶ死闘を繰り広げるのを知っているだけに、男子の3セットは相当ハードルが高いものだろうと想像する。賞金を同額にするなら、女子も3セット先取になり、スポンサーの数も同じ数にならないと無理だろうか。      (了)

 

セブンイレブンの24時間営業(2019.02.21作成)

大阪のセブンイレブンのオーナーが、配偶者の他界後、人手不足にたまりかね、24時間営業をやめることにしたら、本社から契約違反で約1700万円もの違約金を求められたという。

 

2時間刻みの宅配が立ち行かなくなったのと同様、もう日本はそんなに便利さを追求しなくてもいいのではないかと思う。24時間営業をやめると言っても、午前6時から翌朝1時までの19時間営業!「セブンイレブン」なんだから、朝7時から午後11時までで名実が一致する。

 

深夜に働く人、早朝出勤する人のためには24時間営業はありがたい。海外、特にドイツやフランスでの滞在経験があると、日本の便利さが懐かしい。おまけにコンビニの商品は本当にきれいに並んでいるし。ヨーロッパで深夜営業をしている食料品店は、汚らしかったし、アメリカのセブンイレブンも、床の掃除が行き届かず、商品も不潔な感じがした。

 

日本のコンビニの素晴らしさは、フランチャイズ契約をしている店舗オーナーとアルバイト店員の苦労の賜物だ。オーナーも大変だろうが、売り上げ現金が合わないと、バイトに弁償させるケースもあるという。100%キャッシュレスになれば、こういう問題も生じないが、税金の支払いや1円切手の購入もコンビニでできるので、現金支払いはなくなりそうもない。唐揚げやコロッケを揚げる一方、スマホに取り込んだデータをプリントアウトできる機械が使えない客の支援もさせられる。

 

折から飲食店でのバイトテロが相次いだ。コンビニおでんも飲食物だ。おバカなことをしてSNSに投稿するのは、確かに愚かだが、多くのアルバイト店員は時給800-900円くらいで、あらゆることをやらされている。コンビニの親会社も、宅配会社も、アルバイト店員や配達ドライバーがいて成り立つ事業形態だということにそろそろ気づくべきだ。

 

今日、書店でデービッド・アトキンソンの「新・生産性立国論」をざっと目を通したから、同氏の「日本でバカなのは労働者ではなく、経営者」という毎度の主張に合点がいった。確かにバカッターはいるのだろう。が、多くのコンビニ店員や宅配ドライバーは、あれだけの仕事を間違いなく時間に追われながらこなしているのだ。安い時給でこき使い、日本人では対応できないと移民労働者、というのでは経営者として智恵がなさすぎる。フランス人店員なら、客を延々と待たせても自分のやりたいことを優先する。それで、黄色いベスト運動で大統領に譲歩させる。これからは日本の末端の労働者が少々トンチンカンな対応をしても、フランスのことを思い出して怒らないようにしよう。

 

24時間営業を見直し、立地やオーナー及び店員の事情を汲んだ事業形態にならないと、コンビニも存続できない。深夜に営業していると、強盗のリスクもある。

 

地方都市で夜コンビニの灯を見つけ、「開いてて良かった」と心底思ったことがある。が、我々も生活スタイルを見直した方が良い。深夜や早朝に仕事する人は、コンビニの開いている時間に買っておく工夫も必要だろう

 

コンビニ本社は少しでも売り上げを増やしたいがために、営業時間が長い方を望むらしい。生産性など二の次。アマゾンの無人店舗の方が、生産性は高そうだ。 (了)