パブリック・ディプロマシー日本外交に望むこと

34年間の外交官生活を振り返って

公務員住宅(2012.01.22作成)

昨年末から朝霞の公務員住宅をはじめ、いくつかの公務員住宅がワイドショーで取り上げられていた。私が公務員住宅のお世話になったのは、入省4年目、フランスでの語学研修を終えて帰国した時、数か月だけ地下鉄丸ノ内線方南町駅の独身寮のお世話になった。3畳ほどの畳の部屋で、共同の風呂は男女で入浴時間帯が分かれていた。携帯電話もない時代で、自分で電電公社(!)の電話債券を買って手続きしない限り、一階にある赤い公衆電話を使うことになる。共同のトイレ、台所、洗濯機があった。

 

残業があると風呂に入れないこともあった。アンペア数が低すぎ、室外機を設置できないのでエアコンは望めず、扇風機のお世話になることになる。結局、数か月で金利8%以上のローンを組んで30平米ほどのマンションを買うに至った経緯は、評判の悪い自著に記した。

 

その後、40代半ばで結婚して千代田区四番町の公務員住宅を検討したけれど、民間のマンションと比べあまりにも薄汚く、設備も古いので、民間の賃貸マンションに入る経緯も同じ自著に記した。

 

首都圏以外から中央省庁入省のため上京しても、当時は移転費など支給されなかったし、高度成長期の東京の住宅難は大学を出たばかりで初任給が8万円ほどの身にはこたえた。独身寮はやはり地方出身の若い公務員にはありがたいものである。が、年次を重ね、そこそこ給料も上がっていく中、公務員住宅のお世話になるかどうか、それぞれの価値観の問題だ。家族構成も住宅選びの判断に影響する。東京に何の基盤のない私は、海外勤務から帰ってきた時、自分の家と言えるものが欲しかった。40代半ばまで独身だったから、老後の心配もあった。

 

若い人の希望の職業No.1は公務員だと言う。国家公務員なのか地方公務員なのか。いわゆるキャリア官僚なのか、そうでないのか。サッカー選手や花屋さんは小学校低学年の希望職業だろうけど。私は自分の息子に公務員になって欲しいとは思わない。私が4年生の国立大学を卒業した昭和53年、女子を門前払いしたり、女子のみ親元から通勤、制服着用、タイプ習得などと言わず、男女を同じ雇用条件で雇ってくれるところは、公務員か電電公社職員くらいだった。就職事情も公務員住宅の施設も30数年で大きく変わったことを実感する。        (了)