パブリック・ディプロマシー日本外交に望むこと

34年間の外交官生活を振り返って

吉本騒動の中、映画「花火」を観た(2019.07.25作成)

闇営業問題に端を発し、宮迫博之田村亮の捨て身の記者会見、岡本吉本興業社長の5時間余の記者会見と平行して、松本人志が動き、加藤(浩次)の乱があり、引退した島田紳助までインタビューに答え、百家争鳴が続く

 

直木賞を受賞した吉本芸人の又吉直樹の小説「火花」が話題にもなっていないのが不思議だ。売れない芸人を描いた小説なのに。

 

小説は受賞間もない頃に読んだが、映画は昨晩アマゾンプライムで無料視聴した。上京しても売れない日が続く主人公が菅田将暉、ちょっとあぶない先輩芸人が桐谷健太。ふたりとも大阪出身で、大阪弁に無理がないのがよかった。

 

「売れたいなあ!」と悲痛な声を上げているうちはまだ芸人を続ける意欲があったが、「上京してきてずっと風呂なしのアパート住まい」という主人公の相方の愚痴にいたっては、もう芸人を辞める決意がついていた。

 

吉本興業は6000人の芸人を抱えるという。彼らは吉本の作った学校NSC New Star Creation やYCC Yoshimoto Creative Collegeに授業料を払い、いつの日か花形芸人になることを夢みているのだろうか?師匠の元で修業し、パワハラに堪え、才能ある若手に対する嫉妬心を掻き立てないよう細心の注意を払う前時代的な芸人誕生のコースを少し近代的にした功績はあるのだろう。寿司職員になるのに、頑固オヤジのもとで、何年も徒弟の日々を過ごすより、寿司の味や握り方、独立して寿司店を開く経営上の注意事項についても科学的、論理的に説明してくれる近代的学校の方が望ましいように。

 

が、お笑いは努力だけでは報われない。天賦の才に加え運もある。チュートリアル徳井義実が、テレビドラマの中で、有名大学出身の商社の海外駐在員を演じていた。彼の出身大学である京都花園大学からは、なかなかこういうエリートサラリーマンは生まれないが、徳井義実は世の中にゴマンといる商社マンよりも大学の偏差値こそ及ばなかったものの、はるかに狭き門である芸人の世界で才能を発揮して、トップ芸人の一人になっている。(2021.1月加筆)後に脱税で活動自粛となったが、追徴された納税額は4大商社の役員並みだろう。

 

芸人に学歴はいらない。テレビ番組のMCを務める人にお笑い芸人出身が多いのはトーク力、抜群の瞬発力を漫才で鍛えられているからなのだろう。

 

売れなければただの人。「花火」の主人公やその相方、先輩同様、10年やってもダメなら人生の軌道修正をしなければならないのだ。

 

ところで、学歴がいらないのは芸人だけではない。先の参院選で自らは落選したものの、比例の特定枠で、重度身体障碍者二名を国会議員として当選させた「れいわ新選組」代表の山本太郎は高校中退だ。開票特番で、インテリ代表の池上彰と対峙しても論破していた。今朝のテレビ朝日羽鳥慎一モーニングショー」に生出演し、立て板に水で持論を述べていた。デフレ脱却のための消費税廃止、人間を生産性で測らない、長期的には原発廃止、当面は火力発電、特に環境負荷の低い天然ガスによる等々と総論レベルであるが、自分の信念だから全くよどみなかった。慶応、財務省出身のパワハラ自民党議員よりも、あるいは北方領土を武力で取り返すと発言した後やけっぱちになっている東大、経産省出身の元維新の会議員よりも、一定の人々の心をつかんだようだ。前回のブログで述べた「あぶれオス」や売れない芸人も、その「一定の人々」かも知れない。                            (了)