パブリック・ディプロマシー日本外交に望むこと

34年間の外交官生活を振り返って

悪化する日韓関係と不買運動(2019.08.06作成)

韓国側の徴用工判決や日本政府の韓国を輸出管理のホワイト国から1ランク下げる決定で、日韓関係は悪化する一方。

 

前期の講義で学生に日本のモノ・サービスを買ってくれる上位5か国を調べるようにと宿題を出した。米国、中国、韓国、台湾(国と呼ぶと中国が怒るが!)、シンガポールである。訪日観光客数でも、韓国は中国と並ぶトップ国。大事な国である。

 

韓国における反日デモユニクロデサントの日本ブランドのロゴが付いた箱を壊す映像は、もちろんいい気はしない。

 

1965年、非民主的で人権意識もなかった韓国の軍事政権と結んだ日韓請求権協定で解決済みとするのが日本政府の立場だ。日本は戦争に負けたんだろ、北方4島がロシア領なのはその結果だ、とロシア人に言われても納得する日本人は多くないだろう。日ソ不可侵条約を破り、ポツダム宣言受諾後も侵攻してきた。シベリア抑留の過酷さも伝えられている。

 

日本人はずっと韓国人を差別してきたし、今も嫌韓ヘイトスピーチを平気で口にする人が少なからずいる。ある知人女性は韓国と言うと顔をしかめる。「井川遥ってきれいねえ」と私が何気なく口にすると、「でもあの人韓国よ」と言うのである。私は井川遥を女優として美しく、魅力的だとコメントしているのだ、国籍など興味はないのに、彼女にとっては韓国人であることは看過できない属性らしい。その癖韓流スターのヨン様の追っかけをし、「冬のソナタ」のロケ地まで行ったという。私は井川遥の出自を調べてすらいない。

 

かつて日米経済摩擦が激しかった頃、今の韓国人のように日本車をハンマーでたたき壊す米国人がいた。米ソ冷戦時代に東芝の子会社が共産圏への輸出規制に反し、軍事転用されうる精密機器を共産圏に輸出した際も、親会社東芝の製品が破壊のターゲットになった。その頃、米国の外交専門誌フォリン・アフェアーズに、日本人は派手に米国製品をたたき割ったりしないが、静かに米国製品を買わないという行動に出る、実はこちら方が怖いのだ、という趣旨の論文が掲載されたと記憶している。

 

そうだと思う。私は植民地支配や徴用工、慰安婦在日韓国人朝鮮人への差別は申し訳ないと思いながらも、いつまでもいつまでも許さない、ゴールは常に更に遠方へと移動させる韓国政府(その背景には世論があるのだろうが)には、もう勘弁して欲しいという気持ちになる。そういう気持ちの時に、日本製品と韓国製品が目の前にあって、どちらかを選ぶとなれば、少々高くても日本ブランドを選ぶ。日本のメーカーの海外生産品かも知れないが。このタイミングであえて韓国ブランドを選ぶ必然性もない。私のスマホは最初の4年間はiPhone、その後は京セラやソニー製だ。意図的にギャラクシーを避けたわけではないが、布団のダニよけに良いという韓国メーカーのレイコップは、真夏のエアコンと違い別に必需品でもないと思い買っていないし、本当に必要なら日本メーカーの競合品があればそれを選ぶだろう。

 

別に外国製品に限らない。国内でも嫌な会社の商品は買わない。かつて「週刊文春」にいやな記事を書かれ、その時の男性デスクの対応がセクハラそのものであったことを忘れない。よほどのことがない限り文芸春秋社の本は買わないスマホが普及する前、あまりに退屈で読むものがなかった時に、地方のコンビニで「文芸春秋」を買った。本当に逡巡したが、コンビニの書籍コ―ナーにある雑誌のなかで、数時間つぶせそうなものはこれしかなかったのである。それから、もう一回、美容院でクレアという文芸春秋社の旅行雑誌を手に取り、私が欲しい情報が満載だった。少しだけ値段が安く、場所の取らないキンドル版で購入した。さんざん後悔しており、もう金輪際同社の出版物は買うまいと思っていたが、最近も近くのクリニックにおいてあったクレアの京都特集は、半分以上自分の仕事の情報源として役にたちそうだったので、相当迷った挙句、アマゾンで中古本を買うことにした。キンドルで買うと文芸春秋社の儲けになる。中古本なら直接同社の儲けにはならないだろう、というロジックだ。それほど怨嗟の思いを抱いているのである。

 

こんな風に地味な抵抗をする人間もいる一方、派手なパーフォーマンスによる不買運動もある。私の宿への韓国人宿泊客は確実に減っているが、それが日韓関係の悪化故か、円高のせいか、競合施設の安売り攻勢のせいか不明だ。夫々の静かな不買運動で、どれぐらい両国に響いてくるのだろうか?安倍さんも文大統領も悪い。     (了)