パブリック・ディプロマシー日本外交に望むこと

34年間の外交官生活を振り返って

女性嫌悪と外国人嫌いー「ゴゴスマ」コメンテーターの発言は酷い(2019.09.01作成)

TBS系の平日午後のワイドショー「ゴゴスマ~GO GO!Smile!」に出演していた中部大学特任教授の武田邦彦という人の発言は無茶苦茶。

 

数日前に明らかになった日本人女性旅行客がソウルで韓国人男性に暴言を浴びせられた上、路上に倒され髪を引きずられた事件について「路上で女性観光客を訪れた国の男が襲うなんて世界で韓国しかありませんよ」「日本男子も韓国女性が入ってきたら暴行しなきゃ、いけない。(でも)日本男性は(暴行を)我慢すると思うよ」と発言。

 

とんでもない人が私も籍を置く中部大学にいたのだ。10年以上前、北朝鮮による拉致事件関与が明らかになり、核実験を強行したり、ミサイルを発射したりする中、チマチョゴリを着た朝鮮人学校の女生徒に、日本人男性が日本国内で嫌がらせをしたニュースはいくつもあった。この武田先生、専攻は自然科学系だそうだが、研究者が自説を説得するために使う仮説もエビデンスもあったものではない

 

女性国際政治学三浦瑠璃さんは、上記のソウルにおける日本人女性観光客への暴行暴言をゼオフォビア(外国人嫌い)とミソジニ―(女性への憎悪、蔑視)が合わさったものだとコメントしていた。私も自ら経験しており同感だ。

 

今は昔、日本の欧州諸国に対する貿易黒字が多額だった頃、欧州に駐在していた自分に聞こえよがしに嫌なことを言う人がいた。フランス人男性が多かったが、飛行機で隣の席になったイタリア人男性が、「日本ではイタリアの製品は非常に割高なので、こっちで買うんだろ」と言われたこともある。ロンドンの空港で免税の化粧品を買おうとしたら、男性の英国人販売員が、「日本で買うと高いよ。もっと買ったら」と言うので、「日本でこの商品はいくらなのか知っているの?」と聞き返すと、しどろもどろだった。

 

韓国旅行の際、ソウルの店頭でお菓子の試食があったので、買う前に味を試してみようと手を伸ばすとニタニタしながら、試食品の箱を後ろに引っ込めた若い男性販売員がいた。5―6年前のことだ。15年以上も前、北京での会議のこと。壇上で講演をしていたら、質疑応答の際全くテーマと関係のない質問をして困惑させられたことがある。中国人だった。困惑した私が未熟で「その質問は関係ない(irrelevant)」とはっきり言えば良かったのだ。女性は強く反論しないだろう、と思っての嫌がらせだ。講演後、近づいてきてなにやら言っていたが無視した。好きな女の子のスカートをめくりたいんだよ、なる解説をする人がいた。

 

冒頭のゴゴスマ番組では、東国原元宮崎県知事がよくしゃべる韓国人女性研究者に向かって「黙って、お前は。黙っとけ。この野郎しゃべりすぎだよ、お前」と怒鳴りつけ、続けてこう言ったそうだ。「俺、あの人が来たらね、今日欠席してる。事前に言ってよ、今度ね」「僕、気に食わないんですよ、あの人は。あの人ね、韓国ではね、韓国では、親日家の右派なんですよ。でも日本に来ると左派・反日系を装うじゃないですか。これ『ビジネス反日』と僕はいっているんですけど」

 

タレント、芸人から政治家になり、政治の意思決定プロセスを熟知したこの元知事のコメントはそれなりに勉強になる。俳句も上手だ。が、この発言はレッドカード、一発退場だ。

 

いい年をして、公共の電波でマジギレして相手に面と向かって嫌いだと言う。最初の武田教授(?)と同じく、コメンテーターとしての商品価値を上げるため過激なことを言う炎上商法なのだろうか?テレビ局からお座敷がかからないと収入が減ることを恐れるのは、元外交官、大学教授、元知事、どのコメンテーターも同じ。    (了)