パブリック・ディプロマシー日本外交に望むこと

34年間の外交官生活を振り返って

「事務次官」って何だろう?(2019.12.26作成)

日本のエリート中のエリートと思われている人たちを身近に見てきた。上下関係を背景に口説かれたことも少なからずある。当時はセクハラという言葉すらなかった。

 

結論は、あの人たち、行政官としては超優秀なんだろうけど、人間としても男性としても大したことない。だから、日本国民は自分の生命、財産は自分で守らないと、に尽きる。

 

思えば、私の不幸は遠くに虚像を仰ぎ見ていれば能天気でいられたのに、実像を目の当たりにしてがっかりした、ということだ。このブログを書き綴るモチベーションのひとつに、その失望感がある。

 

44歳の引きこもり、家庭内暴力長男を刺殺し、6年の実刑判決を受けた熊沢農水省元次官は執行猶予を求めて控訴するとの12月25日のニュース。加害者の元次官が同情を買うケースだったが、これで世論の風向きは変わるだろう。上級審で執行猶予が認められたら、「上級国民」は有罪でも実刑には服しない、なる言説がネット上に飛び交うことが予想される。

 

判決後、退出する76歳の熊沢被告に「身体に気を付けて下さい」、と「異例」の声をかけた検察官も驚いているに違いない。判決後の500万円を積んでの保釈。他の受刑者と一緒に懲役に服するのは気の毒な気もするが、人を一人殺したのだ。人を殺したわけではない経済犯罪のホリエモンや元経済産業省キャリアの村上世彰氏も実刑判決を受けている。村上氏は保釈されたそうだが、ホリエモンは刑務所暮らしの経験を自身のセールスポイントにしている。まあ、3-40代だから刑務所暮らしも耐えられたのだろう。

 

「上級国民」と言う言葉は、池袋の暴走自動車運転の飯塚幸三元通産省工業技術院院長が逮捕されないことから急速に広まったが、法律上逮捕の必要がないという要件を満たしていたそうだ。今は89歳か?工業技術院院長も一応経産省(現)の一部署のトップだから、事務次官に近い。この人は人を二人殺している。素敵な若い母親と愛くるしい3歳の娘さんだ。

 

同じ12月、鈴木茂樹総務次官が、かんぽ生命の詐欺のような保険商品の販売について、行政処分検討状況についての内部情報を鈴木康雄日本郵政上級副社長(元総務次官)に漏らした、として更迭された。「上級」副社長は、この問題についての番組を製作していたNHKを恫喝したと言われている。総務省はNHKの監督官庁。退職しても、いくつになっても元の組織の上下関係、カースト、マウンティング構図は変わらない。

 

加計学園獣医学部新設に反対した(?)とかで、政権相手に戦っているとして反安倍派の一部には人気が高い前川喜平元文部科学事務次官だが、同僚をせっせと天下り先(補助金や監督権限で締め付けることができる大学事務局等へ)に送り込んでいた事実は変わらない。正確な姓名を調べるためにグーグルに音声で「援交文部事務次官」と発すると、すぐに検索できた。オッケーグーグル「セクハラ財務次官って誰?」と聞くと福田淳一とフルネームが出てきた。凄いなあ。

 

安倍政権は都合が悪くなると公文書を廃棄してしまう政権であることは疑いない。その公文書を管理する独立行政法人国立公文書館」と言う組織がある。内閣府所管だ。そこの館長を長年務めた人に総務省事務次官がいた。「天下り」批判が強まり、独法のトップに次官経験者を据えることが難しくなってきた。この元次官は、館長を退かされたものの、公文書顧問とかなんとか不思議な役職で、いつまでもこの公文書館にとどまっていた。しかも一人ではない。総務省時代からのコバンザメとパッケージ人事である。ノンキャリの人で、生涯この元次官の茶坊主として生きることを固く決意していた人だ。元次官も、この茶坊主を行く先々に連れて行く覚悟であった。公文書アドバイザーなるお手軽称号を得ていた。天下りは役人一人の面倒みるだけでは済まないのである。二人の人件費を税金から捻出するのだ。後輩次官も先輩次官の願いを断り切れないのは、かんぽ生命問題と同じだ。やれやれ。

 

本当に事務次官って何だろう?頭が良いことは間違いない。行政に関する記憶力は抜群だ。が、家族や同僚、部下の怨嗟を買っていることについての記憶力は欠落していそうだ。危ないものには近づかない俊敏さ、嗅覚。政治家やマスコミへの対処能力も凄い。能吏中の能吏なのだ。Then so what?             (了)