パブリック・ディプロマシー日本外交に望むこと

34年間の外交官生活を振り返って

菅総理になっていいこと、悪いこと(2020.09.08作成)

橋本龍太郎さんで決まり、ヒラリーで決まりの事前予想がひっくり返り、小泉純一郎総理、トランプ大統領が誕生したのだから、「絶対」はない。

 

気に入らない相手はつぶす

底意地の悪そうなおじさんだ。鉄人の体力、努力家だから、勉強しない、努力しない人には冷たいのだろう。自分に反抗する相手には残酷なのは、まあ普通なんだろう。「半沢直樹」などこれを全面に押し出した番組のようなので、気分が悪いので見ない。余談だが、以前のエントリーで取り上げた外務省の「セクハラ」上司に反発したら、「牙をむきやがって!お前をつぶしてやる」と言われた。その後の推移を振り返ると、この人が色々口先介入したのだろうと思う。2020年6月26日エントリー「不倫報道とチクられ男」http://www.kiyoi.info/public-diplomacy/pubdip000148.html

菅氏も何十年にもわたり、人事その他で相手を「つぶし」にかかってきたのだろう。倍返し。

 

集団的自衛権憲法解釈で認めて良いのか、が議論されていた時、NHKの「クローズアップ現代」でフリーで評価の高い国谷裕子キャスターが菅官房長官に厳しい質問を繰り返したとかで、同キャスターは降板させられた、と伝える日経ビジネス掲載記事がある。https://business.nikkei.com/atcl/opinion/15/213874/012600016/

 

望月記者は東京新聞所属で、同新聞が望月記者を支える限り、菅長官にはこの新聞社の広告収入減等嫌がらせの手段は一定程度あるものの、NHKに対する幹部人事や予算による圧力とは影響力が格段に違う。本当なら怖い人だ。

 

引き立てたい子飼いには圧力をかけて出番を作る

「つぶす」とは反対に、「引き立てる」ことで印象に残るのは菅原一秀議員だ。選挙区に秘書が香典を配ったとか自身がカニやメロンを配ったとかで、わずかな期間で経済産業大臣を辞任した。菅さんの子飼いだそうだが、主要ポストで入閣する前から民放の番組の様々なシーンに、ニュースの主役である人の隣に立つ菅原議員の大きな顔が繰り返し映し出されていた。

 

誰だろう、とは思っても調べるつもりもなかったが、偶然見た番組(「あいつ今何してる?」か、同様のテーマの番組)に、同議員が中学か高校の同級生のタレントと一緒に出演していた。その後の同議員の入閣を知り、菅さんが民放のテレビクルーに菅原議員がテレビ映像に移るように仕向けたのかな、と想像した。全くもって全国に知られている政治家ではなかったのだ。映像の主役である政治家の真横に菅原議員を立たせる必要があるのだが、これも演出っぽい。

 

大臣辞任以降、同議員が民放の番組のシーンで見かけることはめっきり減った(自分の知る限りゼロ)。陣笠議員が主役の周辺にいるところが映ってもおかしくないが、before、 afterで全然映りが違うのが圧力→演出を想像させてしまう。(「すが」に「すがはら」とはややこしい。)

 

地方再生とインバウンド政策の功罪

それでも、ふるさと納税とインバウンド政策は地方が自ら創意工夫をする制度としては出色だ。「地方」とは選挙区の神奈川ではなく、生まれ故郷の秋田を想定しているのだろう。

 

財政投融資で高級ホテルを全国に」という打ち上げ花火発言もあったが、多分「観光立国アドバイザー」ともてはやされているデビッド・アトキンソン氏に入れ知恵されてのことだろう。幸か不幸かコロナでインバウンド客は実質ゼロ、このアイディアは当面は頓挫だが。かんぽの宿の高級バージョンを地方に作るのか、とびっくりした。

 

新築するより、地方の取り壊されそうな歴史的建造物に耐震工事を施し、宿として自ら収益を生み出せるように生まれ還らせるのは応援したいアイディアだ。一方、京都宇治川沿いに立つ見苦しいコンクリートの昭和の建物は、減築、改装、美観のための投融資が必要かもしれない。京都のようなコロナさえなければ自然と観光客が来る町には、ハイヤットのようなブランド力がある民間企業が景観に配慮した高級ホテルを新築開業している。岡崎の景観保全地区にあるスタバやブルーボトルコーヒーも素敵な建物だ。

なお、ホテルやコーヒーチェーンの場合、ブランドの名義貸しだけで運営は別母体、資本を提供しているのも、全面に出ているブランド企業ではないことがあるらしい。

 

D.アトキンソン氏の「高級ホテルで富裕層から外貨を獲得する観光立国政策」「最低賃金引上げ」は、何度も聞かされているので新鮮味はない。同氏は「お茶をペットボトルで飲むなんて、と日本の飲料メーカーは見向きもしなかった」と30年も前の出来事に対する恨みつらみを今だにあちこちで書いたり、述べたりしている。今やプラスティックフリー、どれだけプラスティックゴミを減らすかが地球規模の課題になっているのに。菅さんに一定の進言ができるゴールドマン・サックスのアナリストも加齢とともに少々ぼけてきたのかな、と思っていたら、今朝のフジテレビ「特ダネ」では、なるほどという意見を述べていた。

 

合理的でなく感情的な時もある

GoToトラベルキャンペーンの東京はずしは、アトキンソン氏いわく「(アナリストの立場からみれば)合理的根拠もなく、感情的な判断だ」。その通り!自分は東京都民だが、接客を伴う感染リスクの高い施設には行かないし、スーパーやコンビニも混んでいると入店しない。そばで大声で話す人がいるとさっと逃げる。数少ない友人との連絡はメールか電話だ。マスク、アルコール、手洗い、うがいを徹底しての引きこもり生活を送っている。近隣の神奈川県民や千葉県民の中には、感染リスクの高い施設が大好きな人もいるはずだが、彼らが国税を原資としたGoToトラベルの恩恵を享受できるのに、東京都民であるというだけで、全国でもっとも担税能力が高い住民が住んでいる自治体であるにもかかわらず、国税を原資としたキャンペーンから「排除」されている。住民票があっても、そこに住んでいるとは限らない。選挙区と東京をしばしば往復している国会議員など、実際に住んでいる場所と形式上の住所が一致しない人の典型である。

 

天理大学ラグビー部員の間でクラスターが発生したというので、他の天理大生までアルバイトを遠慮して欲しい、と言われていることについて「根拠のない差別だ」という声がある。東京排除は、1000万人のまぎれもない日本国民相手に、経済的恩恵をめぐる「差別」を堂々と中央政府が実施しているのである。菅さんはこういうことを平気でする人なのだ。怖い。             (了)