パブリック・ディプロマシー日本外交に望むこと

34年間の外交官生活を振り返って

小池百合子都知事の誕生(2016.08.01作成)

ぶっちぎりの勝利。7月31日午後8時の投票締め切り直後に「当選確実」。あっぱれ!

 

小池候補と増田候補の違いは、起業家と雇われ社長の違い。本気度としがらみのなさが歴然としていた。

 

もちろん、弁舌のうまさも素晴らしく、敵失も幸いした。「厚化粧の大年増」なんて言う人が、ついこの間まで東京都知事だったのだ。ジャンヌ・ダルクはもっと若いという迷言を発する自民党幹部もいて、敗色濃くなると貧すれば鈍する。同じ自民党でも笹川元総務会長は、石原元都知事や女性の年齢がまず気になる深谷東京都連最高顧問と同年代、小池候補を応援した東京地検検事出身の若狭勝議員も男性だ。男性だから、年配だからと十羽ひとからげにしてはいけないのだろう。

 

女性として学ぶべきことがある。17日間の選挙期間中も、前都知事の辞任がちらつき始めて以来のメディア露出の期間中も、ビシッとメイクをし、髪もきちんとセットされていた。浴衣姿もあでやかで、百合子グリーンを使ったファッションはさりげなく上品で、勝負服というとど派手な原色の服で登場する他の女性政治家とは違っていた。当確が出たときのジャケットもベージュ。師と仰ぐ小泉元首相のファッションアドバイザーは実のお姉さんだというが、小池さんにも、センスのいいファッションアドバイザーが、選挙参謀SNSを使った戦略家と同様に、そろっているのだろう。そういう人を集められるのも、ご本人の力量だ

 

電柱地中化待機児童問題をも念頭に入れた空き家対策、スモーク・フリーの東京オリンピックパラリンピック実現で力を発揮してほしい。環境大臣時代のクールビズ導入は、お金を使っていない、考え方を変えただけだ、とご本人もおっしゃっていたが、男性はとかく事業予算拡大こそ自らのパワーの証と考えるところがある。制度を変えることによって、人々の行動を変える、という智恵のある政策は大歓迎。東京は部分的にはニューヨーク、ロンドン、パリ以上の魅力をすでに持っている。世界のお金が集まる町にして、それを上手に売り出してほしい。

 

発信力と華の双方を持った女性都知事誕生は、女性の活用を成長戦略に組み入れたいとしている安倍政権にとっても朗報のはずだ。

                             (了)

 

6月26日中部大学講義【外務省とは?】 【外交官の仕事】(2017.06.26作成)

2017年6月26日、中部大学における講義メモに加筆

 

「外務省設置法」という法律の第三条に任務、第四条第一項に29に及ぶ事務が列挙されている。29の具体的な事務は下記の同法を開いて参照してもらうとして、「任務」の条項を引用する。

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H11/H11HO094.html

 

(任務)

第三条  外務省は、平和で安全な国際社会の維持に寄与するとともに主体的かつ積極的な取組を通じて良好な国際環境の整備を図ること並びに調和ある対外関係を維持し発展させつつ、国際社会における日本国及び日本国民の利益の増進を図ることを任務とする。

  前項に定めるもののほか、外務省は、同項の任務に関連する特定の内閣の重要政策に関する内閣の事務を助けることを任務とする。

  外務省は、前項の任務を遂行するに当たり、内閣官房を助けるものとする。

 

目的:第1項をざっくりまとめると、次の2つ

平和・安全保障

日本国、日本国民の利益の増進

 

組織:この任務を遂行する組織として、次の2つがある

外務本省(国内)

在外公館 (海外にある大使館、領事館、国際機関への政府代表部)

ポイント:国内か海外か?

 

ヒト:組織を構成するヒトとして、本省職員は次の二つ

トップの大臣、副大臣政務官のように政治任命された幹部

役人(公務員)

 

ポイント: 政治家か役人か?

 

公務員の内訳も次の二つ

入省時から外務省に帰属する公務員

一時的に外務省に配属されていた者(出向者)

 

ポイント:入省時からの外務省員か、一時的に外務省に派遣されているか?

 

出向者も次のカテゴリー分けが可能

他省庁からの国家公務員

官民交流による企業関係者

学者、研究者、弁護士、会計士等専門性のある人材

関連団体(国際協力事業団国際交流基金等)派遣職員

自治体との交流による地方公共団体出身者(地方公務員)

 

ポイント: 外務省には、色々な背景の者がいる→異なる経験、背景の者の視点は国民全体の利益増進のためには大切、ただし、日本国全体の利益よりも、出身組織の利益ばかりに関心が向かう職員ばかりだと、日本国が一丸となって力を発揮できない弊害もある

 

在外公館(大使館、領事館、政府代表部)に勤務する者は次のに二つに分類できる

本省派遣

現地採用の日本人、外国人

 

ポイント:本省派遣か現地採用か?(企業の現地法人にも本社派遣社員現地採用の者がいるのと同じ)

 

本省から派遣されている者の分類

入省時からの外務省員

他省庁(中央省庁および地方公共団体)から一時的に外務省員となり、原則3年の任期を終えると元の省庁に戻るもの

関連団体派遣の準公務員、学者、研究者

ポイント:大使館員すべてが外務省出身とは限らない(領事館、日本政府代表部も同じ)

 

公務員の分類(試験制度)

政策面で大臣等を支える事務次官をトップとするキャリア官僚

キャリア官僚とともに大臣等を支えるノン・キャリア官僚

本省や在外公館の建物の維持管理、事務に必要な文房具、空調、インターネット環境整備等、事務を遂行する上で必要な足腰を支える職員(大事な仕事だが、外交活動を行うわけではない)

 

ポイント:大学にも教授、准教授、講師という教育・研究に携わる者と大学の事務職員がいるのと同じ

 

ここで一言

足腰となる職員も在外公館に勤務するが、外国語ができるとは限らない

在外公館に派遣される外務省以外の省庁出身者も外国語ができるとは限らない

外務省員も、自分自分の専門語学(ちゅ中国語やアラビア語、ドイツ語、フランス語等)は使えても、英語では仕事ができない者ももいるの

 

ポイント:世界中で英語で仕事を遂行することも可能な英語圏の国(米国、英国、オーストラリア、カナダ等)の外交官、在外公館職員と比べて、日本の在外公館職員は言葉のハンディを負っている者が多い→英語が大切

 

仕事の中身

政策に関係するもの

交渉事(バイー二国間(日本と相手国だけ)、マルチー多くの国を同時に相手にする)

ーーーーーーーーーー

文化行事

セレモニー

市役所、区役所的な仕事(旅券、査証発給、証明書発給)

経費に関すること

 

このうち、政策や交渉に関する仕事は、智恵と工夫となんとか自分の任期中に結果を出そうという気力が求められる

また、どのような仕事をするにも、人件費をはじめ必ずお金が必要となるが、政府の仕事にもお金の使い方を工夫する(コスパが高い)ように促し、経費を節約すれば評価される制度が必要

 

最後に一言

大臣や幹部は、外交官の仕事は、出身母体が何であれ「日本国民の生命・財産を守ること」だと繰り返し職員に伝え、自分自身にも言い聞かせなければならない。残念ながら、青臭いと思われることも繰り返し伝えないと、いい年をした大人も自分の生活防衛を優先する方向に走りがちとなる。           (了)

 

 

議員の個人商店?―豊田真由子議員(2017.06.29作成)

2017年6月29日、「週刊新潮」に豊田議員の元秘書に対する暴言録音音声が公表された。

 

「死ねば?生きてる価値ないだろ、お前とか!」

 

テレビのコメンテーターは、「議員事務所は議員の個人商店だから、商店主の言うがまま」という趣旨の発言をしていた。

 

役人を経て個人事業主となった者として言いたい。個人事業主は自分で稼いで、雇った人に給与を支払っている。自身の生活費も、自分が稼がなければ日々の生活にすら困窮する。議員は事務所経費も秘書の給与も、もちろん自分の報酬も種々の名目の税金で賄っている。一緒にしないで欲しい。

 

現役最後の大使館勤務時代のことである。大使の奥さんが、宝塚歌劇団所属の長女の公演のためステージママとして日本に帰国するたび、大使は出勤せず、大使公邸で知的障害のある次女の世話をしていた。世界一時間給の高い介護職だ。大使が出勤してくれないと困ることは多々ある。その大使の判断が重要だからではない。大使は日々変化する世界情勢を踏まえた本省の方針を頭に入れておくのは当然だ。その情報は、大使館に物理的に出勤しないと把握できないのだ。勉強しない大使のために、部下が情報をプリントアウトして、重要部分に下線やハイライトをつけて、大使公邸まで届けなければならない。

 

大阪船場のあほぼんが老舗の当主となり、遊びまくって散在するのを番頭以下が苦労して支える、というのは山崎豊子花登筺の小説にありそうだが、税金で禄を食む現代の役人世界では看過できない。

 

知的障害を抱えたお子さんが心配なのは当然だろう。が、大使が守るべき普通の日本国民は、障害のある子どもの世話や老親の介護を、人を雇うなり、自ら世話をするため離職するなりしてなんとかしのいでいるのだ。

 

こういう大使のもとで苦労していた時、ある同僚はこう助言した。「大使は中小企業のオヤジなんだから」

「議員事務所は個人商店」と同じ論法で、「大使館は中小企業」で「そのオヤジは何をやっても目をつぶれ」というわけか?大使が自分の知恵と才覚でお金を稼いで収益を上げて、大使館員の給与を支払い、大使館の建物や自分や家族の住む大使公邸の賃料や維持費を支払っているとでも言うのだろうか?稼がなければ明日のない中小企業のオヤジに失礼だ。

 

それこそ「ち~が~う~だ~ろ!」

 

豊田議員の母親は東京外大出身だという。このお母さん、自分を配偶者だと娘が強弁して園遊会に一緒に参列したから共犯である。「配偶者に限る」という規則を盾にとる宮内庁職員に対し、ごり押しする娘を諫め、参列を辞退することもできた。たとえ、天皇皇后陛下のために一世一代の晴れ着でめかしこんできたとしても。娘が国会議員でも、親はいつでも娘を諭すことはできる。雇われた秘書ではないのだから。

                         (了)

7月26日中部大学講義「グローバリゼーションと日本の若者の未来」(2017.07.29作成)

 

世界の中で日本の置かれた状況

過去、現在比較

日本の経済規模(購買力平価、現在):世界の3.7%(1991年は9%―過去との比較)

全盛期の半分にも及ばない、その間アメリカの経済規模は日本の経済規模の3倍に(人口も2億人から3.1億人)

データにあたる習慣をつける

出典:World Economic Outlook IMF が、英語の原典にあたっての検索は大変難しい

将来研究者、論文、著書発表の場合:自分で一時情報を探す習慣は重要

が、時間を節約するために、ある程度信頼をおける人、団体が編集した日本語の資料を参照するのは時間の節約(資料、統計チェックが嫌にならないために)

なお、IMFのデータも各国から提供された資料を編集している

日本の購買力平価(各国の物価指数を考慮)で世界第四位【中国、アメリカ、インド、日本】

市民一人あたりの生活水準はアジアで5位 (世界で29位)

アジアの富裕国(地域)シンガポールブルネイ、香港、台湾 (2017年には韓国にも抜かれそう)(注)中国は台湾を自国の一部地域としている

成長率(将来):内閣府「国民経済計算」1991-2012 0.9% 2010-14 1.2%

2008 -3.7% 2015 1.5%

他国との比較-横の比較

軍事力:軍事予算世界9位(1%前後) (米国:GDPの3%から4%へ)

 

海外のことを知ると、日本の制度改革の参考になる、ただ、海外のことを知る必要があるのは国際学科に限らない→国際学科出身である付加価値を示す

 

課題

再び世界第二の経済大国になりたいのか?

どのような国にしたいのか?――皆さん方若い人が考え、それを実現してくれる政治家を選ぶこと

その将来像に応じ、課題が違ってくる→対策も異なってくる

国民一人ひとりの経済的、精神的生活が豊かで安定してほしい(犯罪率、民度等に影響)

高度成長を遂げ、成熟経済となった

・生産性をあげること

・これまで力をいれてこなかった分野で外貨を稼ぐ:農業、食品加工、観光、

1.経済社会情勢

少子高齢化 

国の借金 正しい借金(良い借金、悪い借金)返済のメドがあるか?借金をして投資として高いリターンが望めるか?

北海道夕張村→村長、公務員、議員の報酬減、行政サービス減、長野県王滝村→議会廃止

例:スイスの議員は無報酬(海外の例を知ることも参考になる)民主主義の多様なあり方

デフレからの脱却 賃金(給料)、人件費、労働市場

2.国際関係

テロの相手(日本での過去のテロ事件:地下鉄サリン連合赤軍、英国の場合:以前は北アイルランド→ISまたは国内の英国籍のテロリスト)

周辺国(中国、ロシア、北朝鮮)は19世紀の論理で動いている難しい国々→彼らの方が軍事力、経済力で強ければ、その意向に従わざるを得なくなる

 

未来への指針

国も個人も、変わることは悪いことではない 変節、朝令暮改、君子豹変する

強いから生き残ったのではなく、変化に適応してきたから―ガラパゴス ガラケー

任天堂花札)→NINTENDO

ユニクロ(繊維産業=斜陽産業と言われていたが) 東レ

 

1.大学入学→就職を考えるにあたって

労働市場での競争相手は日本人だけではなく、また人間だけではない AI、ロボット

日本が得意とする産業、技術も変遷していく→名古屋地域といえば自動車産業

が、米国では自動運転車(テスラモーターズ)が現実のものとなり、ヨーロッパは2040年までにガソリン車、ディーゼル車の生産終了を目指す

大学も国際競争にさらされている。大学の講義もAI?海外の有名教授の講義もネットでフォローできる時代、海外の大学の学位も遠隔授業で取得可能

 

日本市場は縮小(国内の消費者が減っていくのは確実)→同じ生活水準を維持する=同じ付加価値(output)を創りだしていくには、生産性を上げ、海外に活路を見出さざるを得ない

(以前から資源のない日本は、輸出で外貨を稼がねばと言われていたが、今も同じ)

雇用者は日本企業とは限らない。アジア1豊かなシンガポールは、海外からの投資(税、英語、銀行秘密、会社設立の容易さ等)で豊かさを実現→上司、同僚、部下が外国人であることも、多文化共生―理想と現実は違う(自国民、家族、お友達優遇等)

日本は外国資本にとっては魅力的な投資先か?英語、規制、税率

日本に残る分野:インフラサービス(電力、水道、ガス、道路、鉄道)だが、日本人が雇われるとは限らない。日本人が建設、補修整備するとは限らない(ロボット、AI?)

就職人気企業は過去、現在、未来で入れ替わる

正社員?東芝、シャープ

公務員人気:中央、地方政府は補助金、予算でサービスを提供し、コスト無視し、収益をあげてはいけない→人生100年時代に公務員として長年生活すると、現実世界が見えなくなる

自分の適性、興味のあること、得意分野にいつ気づくか?

成長分野:食品、農産物輸出、観光

経常収支=貿易収支(モノの輸出入)+所得収支(投資など)+サービス収支(海外旅行など)+「経常収支移転」(他国への経済援助)

英語、会計(平たく言うと財布のこと)、法律(リーガルマインドを身に着ける)

 

2.投票に行こう

オーストラリアでは、投票は権利であると同時に義務

民主主義の古参国英国では在外投票制度なし

事前予想に対しどのような行動をするか?

(1)棄権しても、(2)投票所に行き白紙投票しても、(3)事前予想通り投票しても、いずれも事前予想通りになる→事前予想通りが嫌なら投票所に行き、別の名前(党)を書いて投票するしかない

「まともでない人の中から相対的にマシな人を選ぶ忍耐を選挙と呼ぶ」チャーチル

(注)世の中完璧な英雄はいないー過去の英雄は美化されている(坂本龍馬)が、生存中の指導者は毀誉褒貶あり(生前のスティーブ・ジョブズ

 

 

効果測定

  • 日本より購買力平価ベースで経済規模の大きい国を三つ挙げよ。
  • 日本からの輸出が多い国(地域)上位3国を輸出額の多い順に次の中から選んで並べよ。

英国、韓国、ドイツ、米国、フランス、台湾、イタリア、中国、

  • 選挙の事前予想に賛同できなかったらどうする?

棄権する、投票所に行き白紙投票する、投票所で予想とは違う投票をする

                          (了)

 

京都の伝統文化を担うのは誰か?(2018.02.03作成)

2月2日、東京で京都市長がレセプションを開催、縁あって顔を出してみた。

 

京都のお酒やビーフ京野菜等の食材の紹介や舞妓のあいさつや東映剣劇もあって、盛りだくさんの豪華なイベントだった。

 

が、ざっと名刺交換した出席者たちの顔ぶれは、京都のお茶屋文化や西陣の衣料を引き立ててくれそうな方々に見えなかった。

 

まず、各国大使、大使館員たち。箔がつくので各国大使を招待したがる主催者は多い。が、先進国出身の外交官ならただの公務員。お金はない。米国のように政治任用が当たり前の国の大使なら、選挙で大統領候補に多額の資金を提供した、大統領に近い実業家や有力者もいるが、多くの国の外交官は本国に基盤のない公務員。大使ともなれば、次の就職先に頭を悩ます高齢者である。人のお金をあてにすることはあるが、自分の裁量で出せる資金があるわけでもない。自身の外交官生活の終盤、各国大使主催の国祭日レセプションに顔を出すと、政府だけでは立派な食事を提供できないらしく、民間企業の支援を得て面目を保っている例もあった。自国の民間企業の宣伝も兼ねていたのだろう。民主主義国家の政府は、お金がないのが当たりまえ。税金で維持されているのだから。

 

京都市長は、外国の総領事館を京都に設置してほしい、と述べていたが、京都にある国の出身者が多ければ、自国民保護のためにその国の総領事館設置の話も出てくる。まずは、京都に外国企業の誘致をして駐在員を増やすことだ。米国の州知事や議員は、日本企業に限らず外国企業の誘致に熱心で、大型投資案件誘致、それに伴う雇用創出こそ州知事、州議会議員の手柄である。外国の総領事館があれば箔がつく、と思うところが、お公家文化が長らく息づいていた京都らしい、というところか。商人(アマゾンとか)や職人(スマホのアプリはモノづくりだろう)が出てこないとお金は落ちない。

 

美味しい食事が供されるレセプションの常で、タダ飯、タダ酒目当ての招待客も多く、私が話し込んでいたテーブルの斜め向かいには、70歳は明らかに超えていると思しき女性が、黒い帽子をかぶったまま、文字通りひたすら「食いまくっていた」!いくつになっても健啖なのはいいが、みっともない。

 

せっかくだから、と京都牛なるものの試食に長い行列の後尾に並び、やっと自分の番が回ってきたと思ったら、どこからか外務省の8年先輩の元大使が、さっと現れ横入り!これもみっともないことこの上ない。順番を守ってほしい。小学生以下だ。タダ飯を食いなれてきた、特権階級だと勘違いしている元大使をレセプションに招待して、どれだけ京都市の目指す目的が達成されるのだろうか。

 

本物の舞妓さんも素敵だったが、京都の誇るさまざまな伝統文化をこれから支えていくのは誰だろうかと案じてしまう。僧侶は税制で優遇されている。京都大学はじめ、京都にあまたある大学の理系の先生は、企業からの支援があるかもしれない。お金が自由に使えるのは、非上場の創業者社長だろうか。ホリエモンコインチェックの社長さんが京都でお茶屋遊びしているとはとても思えないが。他人事ながら、誰が京都の伝統文化を支えるのだろう。

 

文化庁の京都移転が決まった際、京都市役所には「祝文化庁京都移転」という横断幕が下がったそうだ。1000年以上、時の権力者に寄り添ってきた京都。まさか文化庁が救世主の権力者と思っているはずはないですよね。     (了)

内閣府公文書管理課長による文書改ざん(2018.03.11作成)

2018年3月9日、東日本大震災7年目を翌日に控え、佐川国税庁長官の辞任、朝方には近畿財務局の職員の自殺のニュースが流れた。財務省は来週の国会で、文書書き換えを認める方針を固めたとのこと。

 

役所の公文書も、私人の遺言も都合が悪いと改ざんされるということだ。もっとも一連の問題は、改ざんされる前の文章が正しく事実を反映している、という前提あっての「改ざん」批判だ。公文書そのものが事実を反映していないこともある。内閣府公文書管理課長(!)が、決裁前の会議の記録文書に、自分にとって都合が悪いことが書かれているので、そのくだりを削除せよと食い下がり、そのくだりの発言者が譲歩して削除された文章が府内決裁を了して、公文書と相成った例を知ってる。

 

2011年、まさに東日本大震災の年である。独立行政法人国立公文書館」は、内閣府の公文書管理課長が職務上監督する立場にある。この国立公文書館の非常勤監事である公認会計士が、会議で公文書館経理の問題を指摘した。監事として雇われている存在意義を主張したかったのだろう。が、これが公文書管理課長には気に入らなかった。そのまま議事録に掲載されると自分がきちんと経理面で監督していない、ということになる。もともと小さーい男だったのだろう、監事に拝み倒して、その部分を議事録から削除してもらい、一件落着。この議事録は、一部の議事内容が記載されないまま「公文書」となった。

 

ジャーナリストや研究者は、「公文書」は事実を反映しているという前提に立って取材や研究を進める。その「公文書」が、関係者の都合や好みで実際に起こったことが反映していないこともある、ということなど知るよしもない。

 

この経理に関する問題提起が削除された、あったことをないと記した議事録が、日本や日本国民の将来を左右する事件ではない、と主張する方もいるだろう。が、「あったことをないように記録せよ」と主張したのが内閣府「公文書管理」課長で、議事録は国立「公文書」館のマネジメントにかかる事項である。まるでブラックジョークのような一件であった。その課長(当時)の名前は岡本信一、「公文書管理」「公文書管理法」に関する著作もいくつか出版している。          (了)

 

判断能力の低い配偶者の責任は誰がとる?(2018.03.19作成)

森友学園への国有地売却についての財務省の文書改ざん問題に関し、野党は、安倍昭恵首相夫人を国会に呼んで説明させろ、と主張している。「判断能力の低い」「勘違いの」「権力者の妻」を引きずり出しても意味がない、と主張する人もいる。

 

強い意思をもって夫の権勢を濫用する「恐妻」は数えきれないほど見てきた。正直、安倍昭恵さんのイメージは「恐妻」とは少し違う。脇が甘くて、近寄ってくる者の隠れた意図を見抜けない、と弁護する向きもある。甚だしい勘違いと、ずれた方向性ながら、昭恵さんが「強い意思」を持って行動していることは間違いない。日本女性に対し、もっと気概を持てと講演(説教!)するくらいである。「誰それの妻」「誰それの母」だけで終わりたくない女性はたくさんいる。富豪の娘で、政治家三世の夫は順調に総理にまで上り詰めたが、残念ながら子宝に恵まれなかった昭恵さんは、自分だけの道を歩みたかったのだろう。

 

たいていの恐妻家は無意識のうちにも自分の権勢は夫のそれに依存していることを知っている。今週観たテレビドラマには、不倫夫を恨みながらも、「大臣候補の政治家の妻」から「タダの人の妻」になりたくがないため、狂言殺人事件の被害者まで演じる妻が登場した。

 

やたらと旦那を立てるが、幼稚園児、保育園児の保護者に対しては間違いなく権力を誇示する恐妻である籠池夫人と昭恵さんの電話でのやり取りをみると、わけがわからなくなる。昭恵さんは確かに判断能力が低い。文脈から外れて「祈ります」なる不思議な発言があり、これが2017年の流行語大賞の候補にもならなかったのは、ユーキャンの安倍首相への忖度か?

 

聖心女子大付属の小中高では成績がついて行かず、落ちこぼれ受け皿校らしき聖心女子専門学校とかに転校させられたらしい。まあ、ダイアナ元妃も、あまり学業は立派ではなくスイスの花嫁準備学校のようなフィニッシングスクールに通っていた。同妃も当初はオツム弱い系のイメージだったが、嫁ぎ先の王室と、性格も外観も気色悪い夫に鍛えられ、人のこころを捉える感性を磨いていき、People’s Princessと呼ばれるようになった。

 

昭恵さんはそういうセンスも中途半端だ。「家庭内野党」として、旦那やネトウヨが嫌っている韓国にも抵抗がなさそうな人かと思いきや、籠池理事長が塚本幼稚園の園児に、中国、韓国の悪口を言わせているのに、同じ園児に「安倍首相を一生懸命支えている人」などと持ち上げられると、涙を流す。茶坊主的な取り巻きには、極めて御しやすい、利用しやすい「権力者の配偶者」なのだろう。

 

アラブの春」の幕を切っておとした、チュニジアのベン=アリ大統領夫妻の問題を、フィナンシャルタイムズで指摘したことがある。

私の主張は、配偶者が公職についていない場合は、権力者たる者(大統領、首相、会社社長、野球球団の監督―野村克也さんー等々)、その配偶者の行動についても国民や株主、社員、球団選手やファンに対してaccountableである。なぜなら責任をとれるのは、公職にある権力者のみであるからである。大統領、首相は閣僚、官僚の任命責任を問われる。配偶者の選択責任を問われないのは、世界の権力者に恐妻家が多いからだ男性は皆、明日は我が身かと案じているから、怖くてこの妻を選んだ責任まで負いたくないのだ。政治学者も、これを理論として打ち出したくない。彼らも恐妻家だから。

 

配偶者の選択は完全に私的領域だろうか?First Ladyに一定の役割を求め、与えるのなら、何十年も前の選択であろうと、自らの意思でこの妻を選んだ責任は負ってもらわないと困る。二回りも、三回りも若い三度目の妻を最近選んだのなら、直近の選択だ。

 

「疑わしきは罰せず」の法治国家原則にもかかわらず、ましてや「判決はまだ下されていない」のに、安倍さんが(そのちょうちん持ちの「時事通信社特別解説委員」田崎史郎氏も)、「詐欺師」と断罪する籠池被告に持ちあげられて「教育方針に感銘し」「瑞穂の國記念小學院名誉校長」に嬉々として就任したおバカ配偶者の責任をとるのは、夫である安倍さんしかいない。

 

判断能力が低い者には後見人制度がある。昭恵さんの後見人は安倍首相その人である。

                            (了)